移り変わる風景と登場人物の関係

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 そして第三の舞台は、2022年、コロナの脅威が依然として去っていない大同。チャオは故郷に戻り、スーパーマーケットのレジ打ちとして働きながら暮らしている。そこへ、食い詰めたビンも戻ってきて…。かつて2001年の大同にはエネルギー爆発前のポジティヴな力が宿り、チャオとビンの仲違いと別離のシーンとは好対照をなしていた。同様に、2006年の奉節はダム建設に伴う、唐代から栄えた古都の消滅という運命のエッジを、孤独に航行し、彷徨するチャオの姿がなぞりながら、やはりそこには風景と人物の好対照が現前していた。

 ところが最終章となる2022年の大同では、歳を重ね、スーパーのレジ打ちで暮らしながら、アテンド用のAIロボットの相手をしてみたり、夜のジョギング集団に参加したりと、自分の生き方を静かに実践しているチャオと、防疫コントロール下で粛々とした社会と化した街の風景とが、好対照というよりもむしろ、ある種の同調を果たしているように見える。その同調ぶりの背景には、愛の情熱を完遂し得なかった諦念とともに、絶望によってみずからをスポイルするまいという覚悟のようなものが漂っている。

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