【カンヌ現地取材】セザール賞6冠の名匠がカンヌ本戦に挑む!『DOSSIER 137』会見レポート。ドミニク・モル監督が描く暴力の裏側に潜む無関心

text by 林瑞絵

第78回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に登場したのは、社会の暗部をえぐるフランス映画『DOSSIER 137』。『12日の殺人』でセザール賞を席巻したドミニク・モル監督が、新作で取り組んだテーマは「警察の暴力」。記者会見では、主演のレア・ドリュッケールらと共に、制作の裏側や登場人物のリアルな孤独、そして現代社会にはびこる「暴力」と「無関心」について語った。(取材・文:林瑞絵)

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サスペンスの名手ドミニク・モルの新作がコンペティション部門でお披露目

<div>【写真:映画チャンネル編集部】</div>
【写真:林瑞絵】

 現地時間16日、第78回カンヌ国際映画祭でドミニク・モル監督の『DOSSIER 137』の記者会見が行われた。前作『12日の殺人』(2022年)は、仏セザール賞で作品賞と監督賞を含む最多6部門を制覇した秀作だが、ワールドプレミアはコンペティション部門の2軍的な立ち位置の「カンヌ・プレミア」部門での上映だった。今回、3年ぶりにカンヌ入りしたモル監督は、サスペンスの名手に相応しく、コンペティション部門で堂々と最高賞を狙う。

 会見にはドミニク・モル監督、出演者のレア・ドリュッケール、グスラジ・マランダ、脚本家のジル・マルションらが参加。ドラマの背景は反政権運動「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」が広がる2018年のパリ。国家警察監察総局の女性捜査官が、デモ参加者の若者に警察がゴム弾銃(LBD)を発射し重傷を負わせた事件を担当する。フランスで社会問題となった「警察の暴力」に正面から切り込んだ作品である。

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