【カンヌ現地取材】R・リンクレイター『Nouvelle Vague』が描く“映画の夜明け”。脚本家が語るゴダールとアメリカ映画との深い関係

text by 林瑞絵

第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に登場した『Nouvelle Vague』。アメリカの名匠リチャード・リンクレイター監督が、ジャン=リュック・ゴダールの長編第一作『勝手にしやがれ』の舞台裏を通して、ヌーヴェル・ヴァーグという革命の鼓動を鮮やかに描き出す。記者会見では、制作秘話に加え、脚本家ミシェル・ハルバーシュタットによる“ゴダールとの縁”も語られ、深い映画愛に包まれたひとときとなった。(取材・文:林瑞絵)

“1959年”の現実がそのまま生きている作品——リンクレイター監督の構想

映画『Nouvelle Vague』
【写真:林瑞絵】

 2025年カンヌの話題作であるコンペティション部門の映画『Nouvelle Vague』が、5月18日の記者会見に登場した。アメリカ人監督リチャード・リンクレイターが、ジャン=リュック・ゴダール監督の長編第一作『勝手にしやがれ』の制作の裏側を、芸術運動ヌーヴェル・ヴァーグの誕生の息吹とともに軽やかに伝える。

「ある種の舞台裏ものですが、歴史的な作品について語るというより、1959年の現実をそのまま生きている作品」とモデレーターが紹介し、会見はスタート。

「全くその通り。私の目的は観客がこの時代に入り込み、ヌーヴェル・ヴァーグの始まりを感じてもらうことでした」と、監督は続けた。「映画の構想は13年前から。自由を体現したヌーヴェル・ヴァーグは、私のキャリアにも大事な意味を持っていました」。

 1895年にリュミエール兄弟が映画の始祖「シネマトグラフ」を開発し、今年で130年。『勝手にしやがれ』は、ちょうどその半分の65年前に現れたと監督。「65年前に作られても、今でも完全にモダンな作品。後の世代に多大な影響を及ぼしました。私は映画史の鍵となるこの映画に興味を持ち、大量の資料を探し出して作ったのです」。

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