脚本を担当したミシェル・ハルバーシュタットが語るゴダールの思い出

監督のリチャード・リンクレイター、脚本を担当したミシェル・ハルバーシュタット【写真:林瑞絵】
監督のリチャード・リンクレイター、脚本を担当したミシェル・ハルバーシュタット【写真:林瑞絵】

 会見には、本作の製作と脚本を担当したミシェル・ハルバーシュタットの姿も。ゴダールとの思い出話を惜しみなく披露した。「私は1985年に映画雑誌『プレミア』のジャーナリストとして、カンヌ映画祭に参加しました。『ゴダールの探偵』の記者会見で、ゴダールに「この映画はカサヴェテスに捧げられているが、あなたの映画との共通点がわかりませんが」と問いかけました。するとゴダールは、『いつからプレミアが映画に興味を持つようになったんだ?』と言い、会場は爆笑に包まれました。しかし、私は『その答えは面白いけど、あなたは私の質問に答えてません。カサヴェテスは完全な必要性から映画を撮りましたが、あなたがこの映画を撮った必要性は?』』と食い下がり、後で記者仲間から冷やかしを受けました」。

 この時、ゴダールは彼女に強い印象を受けたようで、後日、映画『リア王』でニューヨークタイムズの記者役に抜擢。それから長い付き合いが始まったという。

「ゴダールとアメリカ映画との深い関係を考えると、本作をアメリカ人監督に任せたことは、天の人(ゴダール)も満足でしょう。もしもフランス人がヌーヴェル・ヴァーグを描けば、皮肉や軽蔑的になったりと良いトーンが見つけられないのでは。アメリカ人だからこそ、愛と尊敬と娯楽性を持って描けたのです」と持論を展開した。

 記者会見では、時にこんな映画史のこぼれ話も楽しめる。これもまた映画祭の醍醐味に違いない。

【著者:林瑞絵プロフィール】

在仏映画ジャーナリスト。北海道札幌市出身。映画会社で宣伝担当を経て渡仏。パリを拠点に欧州の文化・社会について取材、執筆。海外映画祭取材、映画人インタビュー、映画パンフ執筆など。現在は朝日新聞、日経新聞の映画評メンバー。著書に仏映画製作事情を追った『フランス映画どこへ行く』(キネマ旬報映画本大賞7位)、日仏子育て比較エッセイ『パリの子育て・親育て』(ともに花伝社)がある。@mizueparis

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