30年の歴史が紡いだ脚本の妙
今作の設定は、おそらく過去作の制作段階から意図的に仕込まれていたものではないので、いわゆる「伏線回収」ではない。
今作の脚本は、過去作を改めて振り返り、使えそうなポイントやテーマを巧みに拾い上げながら、新たに再構築されたものなのだろう。30年続いたシリーズだからこそ可能な、アクロバティックながらも緻密に練られた職人芸のような脚本だ。
さらに今作では、「仲間や家族の命」と「数百万の命」のどちらを取るのかという、トロッコ問題のようなテーマも投げかけられる。それでもイーサンたちは仲間を救うため、そして一生会うこともなければ感謝されることもない「未知の誰か」のために自らの命を懸けて行動する。その姿勢こそが、本シリーズの根幹に流れるヒロイズムであり、我々は彼らの背中を信じたくなるのだ。
イーサン・ハントは、なぜ不可能なミッションに挑むのか。そしてトム・クルーズは、なんのために体を張ってスタントをするのか。その常軌を逸した献身ぶりが、映画と現実の世界を超えてオーバーラップし、得も言われぬ感動が押し寄せる。
本作はエージェントたちが不可能なミッションに挑む物語であり、インポッシブルな映画作りに挑んだトムたちのドキュメントでもある。不可能の、その先へと観客を誘う、何度もスクリーンで観るべき作品だ。
(文・灸 怜太)
【作品概要】
■監督:クリストファー・マッカリー(『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』)
■出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、ヴァネッサ・カービー、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ、マリエラ・ガリガ、ヘンリー・ツェニー、ホルト・マッキャラニー、ジャネット・マクティア、ニック・オファーマン、ハンナ・ワディンガム、アンジェラ・バセット、シェー・ウィガム、グレッグ・ターザン・デイヴィス、チャールズ・パーネル、フレデリック・シュミット
■全米公開:5月23日
■原題:Mission: Impossible – The Final Reckoning
■配給:東和ピクチャーズ
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