【カンヌ現地取材】ユニクロも支援! 難民監督支援へ、ケイト・ブランシェットらが設立「難民映画基金」記者会見レポート

text by 林瑞絵

5月24日に閉幕した第78回カンヌ国際映画祭。終盤の23日にはケイト・ブランシェットらが設立に関わった「難民映画基金」の記者会見が行われた。祖国を追われた監督たちを支援し、彼らの声を世界に届けるこのプロジェクトは、映画の力と国際連携の希望を映し出す。(文・林瑞絵)

ユニクロも10万ユーロを支援

(左から)クレア・スチュワート、モ・ハラウェ、ケイト・ブランシェット、マリナ・エル・ゴルバチ、ラジェンドラ・ロイ【写真:林瑞絵】
(左から)クレア・スチュワート、モ・ハラウェ、ケイト・ブランシェット、マリナ・エル・ゴルバチ、ラジェンドラ・ロイ【写真:林瑞絵】

 カンヌ映画祭も終盤の5月23日、「Displacement Film Fund(難民映画基金)」の記者会見が開かれた。本基金は祖国から避難を余儀なくされた監督や、避難民の体験を題材にした物語を制作した実績のある監督の作品を支援するために設立。『アビエイター』(2004)、『ブルージャスミン』(2013)で2度のオスカーに輝いた名優で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使も務めるケイト・ブランシェットが創設に参加した。

 会見にはブランシェットを筆頭に、ニューヨーク近代美術館(MoMA)映画部門チーフキューレーターのラジェンドラ・ロイ、ロッテルダム映画祭マネージングディレクターのクレア・スチュワート、マリナ・エル・ゴルバチ監督(ウクライナ出身)、モ・ハラウェ監督(ソマリア出身)が登壇。本基金ではこの2名の若手監督に加え、モハマド・ラスロフ監督(イラン出身)、ハサン・カッタン監督(シリア出身)、シャフルバヌ・サダト監督(アフガニスタン出身)の計5名のオリジナル短編映画を製作予定。短編製作には一人当たり10万ユーロを支援する。

 まずブランシェットはカンヌ映画祭への謝意を伝えた。「ティエリー・フレモー総代表とカンヌ映画祭に、この場を与えてくれたことに感謝します。芸術家の作品を賞賛するだけではなく、世界的な規模で議論の場を提供するのも映画祭の役割です」

 続いて基金設立の背景に触れた。「基金のアイデアは、約1年半前に世界難民フォーラムの会合から生まれました。どうすれば亡命中の芸術家たちの声をより前面に出すことができるのかを考えたのです。当初は実現に10年はかかると思われましたが、企業、慈善団体、文化・芸術機関、映画祭などと幅広い連携が生まれ、実現可能性が高まりました」

 例えば、20年以上に渡り難民支援活動に取り組む日本のユニクロも、重要な支援メンバー。難民映画基金の創設パートナーとして10万ユーロの寄付を行っている。

 もともとは詩人になりたかったが、映画で自己表現をすることになったと自己紹介するモ・ハラウェ監督は、「映画は作り続けることが大事」として、支援に感謝を述べた。「これは単なる映画作りとは違います。祖国ソマリアとの関係を再構築し、現地でコミュニティや映画産業の基盤を作ることに繋がります」と、企画の意義を強調した。

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