「リロの心を入れて大事に演じた」実写版『リロ&スティッチ』日本語吹替版声優・山寺宏一&永尾柚乃、対談インタビュー
その愛らしさで空前のスティッチ・ブームを巻き起こしたアニメーションを完全実写化した映画『リロ&スティッチ』が現在公開中。今回は、日本語吹替版でスティッチ役を務める山寺宏一さんと、リロの声を担当する永尾柚乃ちゃんにインタビューを敢行。制作の裏話や、キャラクターの魅力についてたっぷりお聞きした。(取材・文:斎藤香)
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永尾柚乃の演技に山寺宏一が感動
「初めて試写を観たとき泣かされました」
―――実写版『リロ&スティッチ』が公開となりました。お2人も日本語吹替版の映画をご覧になったそうですね。いかがでしたか?
山寺宏一(以下、山寺)「声の収録は別々だったので、初めて皆さんの声を聞いたんです。とても楽しかったですし、柚乃ちゃんの声の演技に泣かされました」
永尾柚乃(以下、柚乃)「私も山寺さんと同じで楽しかったです。リロとスティッチが一緒にはしゃいだりするところは面白かったし、ナニ(声:MOMONA)と一緒のシーンは感動したり、全部がすごく良かったです!」
山寺「そうだね、面白いところと感動するところ、両方あるのがこの映画の素晴らしいところだよね」
柚乃「(山寺さんに)スティッチ、すごく可愛かったです」
山寺「ありがとうございます。と言っても、僕はスティッチの声だけなんだけどね(笑)。スティッチがね、映画の序盤はとにかくうるさくて『いい加減にしろよ』っていうくらいなんだけれど、リロのおかげでいい子になっていきます」
―――実写化されたスティッチのビジュアルはいかがでしたか?
山寺「僕はアニメーションのスティッチにずっと関わってきましたが、今回のスティッチは、見た目がかなりモフモフになり、可愛さが倍増されていました。リロがスティッチを抱きしめるとき、観ているこちらにもスティッチの重さが感じられるんです。これくらいの体重かなと想像できる。そこは実写ならではですね。この映画を見たら、みなさんスティッチを抱きしめたくなりますよ」
―――他のお馴染みのキャラクターたちも実写ではリアルなクリーチャーとして登場しました。
山寺「プリークリー(声:三ツ矢雄二)がちょっと生々しかったですね(笑)。アニメだとヌメヌメ感はないのですが、実写ではこんなにヌメっとしているんだと。ちょっと驚きました」
柚乃「山寺さんと同じで、スティッチのモフモフがすごく良かったです。本当にすごくモフモフ。キュートでモフモフです(笑)」
山寺「柚乃ちゃんはアニメのスティッチも大好きで全部見ているんだよね」
柚乃「はい。アニメの『リロ&スティッチ』も大好きですけど、実写はさらに面白いと思いました。スティッチのモフモフがすごく伝わってくるんですよ。モフモフはスティッチの見どころです!」
山寺宏一も感心する永尾柚乃の信念
―――柚乃ちゃんはオーディションでリロ役を掴みましたが、オーディションはどうでしたか?
柚乃「『リロ&スティッチ』に声で出演できるなんて、なかなかないじゃないですか? だからリロの心を自分に入れて、『楽しんでやろう!』と思いました。オーディションはめちゃくちゃ楽しかったです」
―――終わったとき「やった!」と思いましたか?
柚乃「はい! すごく楽しかったので、これは受かるかなと(笑)」
山寺「かなり自信があったんですね(笑)」
柚乃「スタッフの皆さんもノリノリで『楽しんでください』という感じだったので、思い切り楽しんで挑戦しました。自信がないと態度に出てきちゃうので、このオーディションでもそういう気持ちにならないようにしていました」
山寺「そうです、合格する気持ちでやらないとね! ネガティブに考えちゃいけないんです。柚乃ちゃん、勉強になったよ。僕は自信がないんですよ。『ダメだろうな〜』と思いがちなので。絶対に受かると思ってやらないと。言葉って大事だよね」
柚乃「“言霊”ですよね。言ったことは本当になるんです!」
オリジナルに忠実なスティッチの発声方法
―――山寺さんはアニメーションでもスティッチの声を担当していますが、実写化のスティッチの声では何か変化をつけたのでしょうか?
山寺「まったくありません。スティッチの声はオリジナルの声を担当しているクリス・サンダースさんの発声が基本なので、今回もクリス・サンダースさんの声を聞いて近づけてやることを念頭に置いて収録をしました。そもそもスティッチチは独特の鳴き声がメインですからね。言葉を発するシーンもありますが、それは見てのお楽しみです」
―――山寺さんは、声の収録をするときに何かルーティーンはありますか?
山寺「温かい飲み物を必ず持っていくことと、のど飴を常備することくらいです。あとはどれだけ練習していくかが勝負だと思います。映像をしっかり見て、台本を読み込んで、自信を持って本番の収録に臨む。オーディションは自信がないんですけれど、収録のときは、柚乃ちゃんと同じで『絶対に決めるぞ』という強気のスタンスで臨んでいます」
―――山寺さんから見て、柚乃ちゃんとナニを演じたME:IのMOMONAさんはいかがでしたか?
山寺「今回の『リロ&スティッチ』はリロとナニの物語ですから、柚乃ちゃんとMOMONAちゃんが1番大変だったと思います。柚乃ちゃんは演技派なので、役にバッチリ合わせてくると思っていました。実際に途中からリロの声が柚乃ちゃんであることを忘れて映画に没頭していましたから。それだけリロを自分のものにしていたんだと思います。オリジナルのリロを演じているマイア・ケアロハさんが喋っているみたいでした。そう感じさせるというのは、声優として理想なんです。
MOMONAさんは声優初挑戦で、演技経験もあまりなかったそうなのですが、そんな風には思えなかったですね。声の演技にナニの心がしっかり入っていました。本当に素晴らしかったです」
楽しみながら吸収する力
―――柚乃さん、何度も練習したのですか?
柚乃「はい! 日本語吹替版の監督さんから、『スティッチが側にいると思って話してね』と言われました。あとオリジナルのマイアちゃんは声の収録をしたとき6歳だったんです。私は8歳なので、少し年上なんですけど、監督さんに『8歳よりも年下の妹という感じで演じてみて』と言われ、そう思いながら演じました」
山寺「すごいね。自分の2年前を思い出して演じたんだね。それができちゃうのが素晴らしいです」
―――柚乃ちゃん、難しかったシーンはありますか?
柚乃「すごく勉強になったし楽しかったので、難しいとか、苦労したシーンはなかったです」
山寺「あるシーンでリロが叫ぶという演技があるのですが、柚乃ちゃん、すごかったですよ。日本語で演じながら英語版のオリジナルに近づけた演技をするのは本当に難しかったと思う。柚乃ちゃん、なんでできちゃうの?」
柚乃「『キャー』って声を響かせるように言ってみてと言われて、その通りにやりました。声を出したあとに、喉が痛くなりましたけれど、飴を舐めたらすぐ治りました!」
山寺「回復力が違うなあ。僕はあんなに叫んだら、飴を一袋舐めてもなかなか治らないよ(笑)。皆さん、あのシーンは本当に凄いので、ぜひDolby Atmosの良い音響で映画を観ていただきたいです」
2人が語るリロとスティッチ人気の秘密
―――山寺さんと柚乃ちゃん、それぞれにスティッチとリロの魅力を教えていただきたいです。
山寺「スティッチの魅力はギャップですね。見た目可愛いけど、とても暴れん坊。破壊することしか知らずに生まれてきたけど、リロと出会って愛を覚えていくわけです。正直、よだれもすごくて野生の動物みたいなところもあるんですよ。でもなんか憎めないし、変化していくスティッチから目が離せない。それはスティッチの持つギャップが人の心を掴んでいるからだと思います」
柚乃「リロの魅力は、周りに流されないところだと思います。リロはリロ、自分は自分ってところが大好きです」
山寺「柚乃ちゃんとリロは似ていますか?」
柚乃「私もあまり人に流されないから似ていると思います。自分は自分です」
山寺「大事なことです。僕は流されやすいから。63年間生きてきて『そういうのもあるんだ。じゃあ、そっちにしようかな』とか(笑)。もっと自分を持たなくてはいけないね、柚乃ちゃんみたいに」
柚乃「ありがとうございます!」
―――『リロ&スティッチ』は家族の大切さを描いた物語ですが、お2人にとって、家族とはどういう存在でしょうか?
山寺「私は妻と2人暮らしですが、本当にかけがえのない存在で、妻がいなくなったらどうしようと考えると怖くなるくらいです。もうすぐ90歳になる母もいますし、どちらも大切な存在です。あと、僕は母の作るカレーライスが大好きなんですが、ありがたいことに今でも作ってくれて…。元気でいてくれて本当に素晴らしいと思う。この間も家族全員、大人数で野球観戦に行きました。楽しかったですね〜。父も野球大好きだったので、絆も感じることができました」
柚乃「私も家族はかけがえのない存在です!」
―――最後に実写版の『リロ&スティッチ』のファンの皆さんへメッセージを。
山寺「本当に心温まる愛と家族の物語です。観終わった後、とても元気になれると思います。ハワイの美しい風景もたくさん盛り込まれておりますので、ぜひ大きなスクリーンで観てください」
柚乃「心がすごくポカポカして。家族って大切だなと思える映画です。大事に大事にリロの声を演じましたので、実写版の『リロ&スティッチ』も大好きになってくれたらうれしいなと思います」
(取材・文:斎藤香)
【作品概要】
『リロ&スティッチ』2025年6月6日(金) 全国ロードショー
監督:ディーン・フライシャー・キャンプ
声の出演:クリス・サンダース(スティッチ役)/マイア・ケアロハ(リロ役)
日本語吹替版:山寺宏一(ステッチ役)、永尾柚乃(リロ役)、MOMONA(ナニ役)、
中村海人(デイヴィッド役)、長谷川忍(ジャンバ博士役)三ツ矢雄二(プリークリー役)、渡辺えり(トゥトゥ役)、手塚秀彰(コブラ・パブルス役)、五十嵐麗(ケコア役)、深見梨加(議長役)
オリジナル・サウンドトラック:ウォルト・ディズニー・レコード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Lilo & Stitch
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【了】