実写版『リロ&スティッチ』が大成功した背景とは? 監督&制作スタッフが熱い思いを語る。オフィシャルインタビュー
アメリカをはじめ世界各国で5月23日 (金) より公開された『リロ&スティッチ』は、全米でメモリアルデーを含む週末4日間としては歴代No.1のオープニング記録となる興行収入1億8,300万ドル(※日本円で約261億円) で堂々のNo.1スタートを切った。(文・編集部)
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制作者へインタビュー
日本でも6月6日 (金) より全国の劇場にて公開され、週末の観客動員数38万人以上、興行収入5億6,300万円を記録し、まさに世界中で“スティッチ旋風”が巻き起こっている。
ディーン・フライシャー・キャンプが監督を、ジョナサン・アイリックとダン・リンがプロデューサーを務めた本作は、20年以上愛され続けるアニメーション映画の魅力を大切にしながら、現代の観客に向けて物語を再構築したディズニー最新作だ。
アニメーションへの敬意と実写ならではの挑戦
監督を務めたフライシャー・キャンプは本作について、「実写化にあたり、アニメーション作品に愛情を込めて敬意を払いながら、制作を進めました。アニメーションと実写は完全に違うものであるということを認識しつつも、実写だからこそできることもあれば、アニメーションだからこそできる表現もあります。私たちの目標は、アニメーション作品と共鳴するような作品を作ることであり、そのためにも、アニメーション作品の世界観を壊すことなく、少し現代的な要素も取り入れました」と語り、アニメーションと実写、それぞれの魅力が響き合うような作品を目指したと明かした。
本作の制作陣は、文化的なニュアンスや物語に内在する価値観を大切にしながら、大人気のアニメーション作品の実写化という課題に直面した。過去に実写版『アラジン』(2019)のプロデューサーを務めたアイリックは、実写化の知見を存分に本作に生かせる存在だという。
そんなアイリックは、「常に意識していたことがひとつあるとすれば、『絶対に台無しにしてはいけない』ということ」と、笑顔でコメントし、「これは、常にファンからインターネットなどで私たちに寄せられるアドバイスでもあります。ただし、ファンは“シーンを一つひとつ忠実に再現する実写リメイク”を求めているわけではありません。ファンが求めるのは、制作陣がアニメーション作品を愛し、深い愛情と考察をもってすべての決定を行うという安心感です。例えば”ハワイアン・ローラーコースター・ライド”のような重要な楽曲を扱う場面は、私たち自身もひとりのファンとして、作中に使われていなかったらがっかりするだろうと思ったんです。俳優が演じる実写作品として、どうすればストーリーを自然に展開できるか、そして新しい世代に向けて新しい体験を届けられるかを模索しました」と語る。
また、アイリックは「実写のストーリーラインを構築するにあたり、キャストが表現すべき感情や物語に目を向ける必要がありました。まずナニとリロの姉妹の関係について、そして両親をなくすこと、ハワイの社会福祉サービスで姉妹が一緒に居続けることができるかといった現実に即してじっくり考えました。それが、実写化にあたって(アニメーション作品との)違いに繋がったと思います」と、実写化において重視した視点について語った。
実写だからこそ描けた“リアルな姉妹の物語”
フライシャー・キャンプ監督は、アニメーション版『リロ&スティッチ』について、「ある意味で時代を先取りしていた作品でした。物語は現代社会が舞台なんです。おとぎ話の国でもなければ、ディズニープリンセスも登場しません。むしろ主人公はディズニープリンセスとは真逆の存在。だからこそ実写版では、特にリロのような人間のキャラクターたちの物語をより深く掘り下げて描くことにこだわりました。ハワイで育つ姉妹2人の、実際にありうる経験としてのリアルな物語を描くことができたと思います」とコメント。
また、今回の実写化にあたっては、アニメーション版の制作者たちの協力も得られている。アニメ版の監督であり、スティッチの声も務めたクリス・サンダースは、今作でも同様に参加。さらに、当時声優として出演していたエイミー・ヒル、ティア・カレル、ジェイソン・スコット・リーの3人が、実写版では新たなキャラクターとして出演している点も見逃せない。
「アニメーション作品の制作者たちは、当時の『リロ&スティッチ』に当然誇りを持っていて、本作の制作にも熱心にサポートしてくれました。本作を手掛けた私たちとしても、アニメーション作品を成功に導いた制作者たちを、制作プロセスに積極的に巻き込むよう努めました」とフライシャー・キャンプ監督は語る。
アニメ版スタッフも再集結
アニメーション版から引き続き声優を務めたキャストについては、「アニメーション作品と同じく本作でもスティッチの声優はクリス・サンダースです。クリスは素晴らしいクリエイターで、もともとスティッチを描き、アニメーション作品の脚本を書き監督した、まさにスティッチの生みの親です。クリスが制作陣として関わっていない作品でも、常にスティッチの声優として作品に関わり続けていました。つまり彼こそがスティッチなんです。だから、本作もクリスに担当してもらわなければならないと感じていました。3Dのスティッチが実写でどのように見えるかということを始め、彼は制作陣に多くの助言を提供してくれました」と、アイリックは語った。
両作品でアニメーション・スーパーバイザーを務めたエリック・グアリオーネはもちろん、アニメーション作品でスティッチのリード・アニメーターを務めたアレックス・クーパーシュミットなど、その貢献は非常に貴重なもの。フライシャー・キャンプ監督は「アニメーション作品を手がけたスタッフの熱意とサポートなしではこの映画は決して完成しなかったと思います」と語っている。
制作の長いプロセスで最もチャレンジングだった点について、アイリックは「アニメーション作品を尊重することも、その一つだったと思います。もっと良くできるんじゃないかと考えを巡らせ、できるだけ多くの人をパートナーとして迎え入れるよう努めました。クリス・サンダースにスティッチが正しいかを確認してもらったり、ハワイのコンサルタントに映画のハワイらしさが正しいかを確認してもらったり、スティッチのアニメーションが適切に感じられるように、より多くのアーティストやアニメーション担当に来てもらったり、あらゆる段階でより多くのパートナーを巻き込みました。本当に最高の映画を作るために、映画の”オハナ<家族>”がどんどん増えていきました。ファンの期待に応えることが、最大のチャレンジだったと思います。そして最終的に私たちはそれを実現できたと感じています」と、作品づくりにおいて常に原作への敬意と多様な視点を大切にしてきた姿勢を明かした。
そうした思いからアイリックは、「実写版『リロ&スティッチ』は、ぜひお近くの大きなスクリーンで体験してほしいです。これまでに見たことがないような、リアルでオーセンティックなハワイとその大自然の魅力が詰まっていて、夏の始まりにぴったりの作品です。この映画はまさに感情のジェットコースター。楽しくて、カオスで、でも心が温かくなる。映画館で他の観客と一緒に笑ったり泣いたり、きっと思い出に残る素晴らしい体験になると思います」と、映画を通じて観客と“オハナ(家族)”の絆を分かち合えることへの期待を口にした。
(文・編集部)
【作品情報】
■タイトル:『リロ&スティッチ』
■公開日:6月6日(金)
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■原題:Lilo & Stitch
■監督:ディーン・フライシャー・キャンプ
■キャスト:クリス・サンダース(スティッチ役)/マイア・ケアロハ(リロ役)
■オリジナル・サウンドトラック:ウォルト・ディズニー・レコード
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