「魅惑的で不可解なパズルゲーム」
並行して進む物語が投げかける問いとは?
あらすじからもわかるように、本作では時制が異なる二つの物語が並行して進む。一つは都市がゴーストタウン化した後のハオたちの世界で、もう一つは街がまだ開発途中だった頃の子供たちの世界である。
後者の世界はハオが廃校で偶然見つけた日記をきっかけに展開されるが、それが果たしてハオの過去の物語なのかハオの妄想なのか、本作でははっきりとした説明は与えられていない。
しかし、後者の世界には、ハオが落とした双眼鏡を子どもたちが見つけたり、草むらで横になる測量チームの目を盗んで子どもたちがイタズラを仕掛けたりといった描写が見られ、二つの世界が実は地続きであることが暗に示されている。
注目は、本作を彩る「戯れ」の数々だろう。本作にはあちこちに細かなエピソードが散りばめられている。
例えば、子どものハオが木の上にある鳥の巣から鳥の卵をくすねて家で大事に育てたり、登校拒否になった“太っちょ”の元へ向かう途中、ハイバスの中で運転ごっこをしてみたり、あるいは、瓦礫が山と積まれた空き地でみんなでサバゲーごっこをしてみたり、子供同士で恋バナに花を咲かせたり―。こういったエピソードはあまりにも他愛ないが、その一つ一つがまるで宝物のような豊かさをたたえているのである。