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先進的な感性で彩られた大人のおとぎ話

©DFFB Sakdoc Film New Matter Films rbb Alexandre Koberidze

これまでのジョージア映画の特徴は、この国の歴史ある民族と同じように独特な個性があり、多様性を元に、民族の魂を謳い、人々の心を一つにするものが多かった。イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニ監督は、このように「ジョージア映画は奇妙な現象だ。特別であり、哲学的に軽妙で、洗練されていて、同時に子どものように純粋で無垢だ。ここには私を泣かせるすべてがある。そして私を泣かせることは容易ではないと言っておきたい」とも語っている。

ジョージア映画の重鎮だったエルダル・シェンゲラヤ監督は「ジョージア映画はジョージア人のためのものだ」と語る。この国の映画人はジョージア人であること、ジョージア映画を作ることを誇りにしている。ジョージア映画の背景にはジョージア民族の魂そのものがあるといっても過言ではないのだ。

しかしながら本作は、従来のジョージア映画とは明らかに異なる、未来を向く感性で彩られた大人のおとぎ話だ。この舞台となるクタイシの旧市街の歴史的建造物や美しい橋、伝統的なジョージアのパン「ハチャプリ」、リザの友人が製作する映画のために街でカップルを探すカメラマン、アルゼンチン代表のファンでメッシのユニフォームを部屋に飾るギオルギと、彼を慕うサッカー好きの子どもたちや、サッカー観戦を“趣味”とする犬たち…。

美しい映像や音楽とともに、それぞれが織りなすオムニバスのようなストーリーがやがて一つにまとまっていき、繊細かつ不思議なストーリーが紡がれていく。

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