物語の底に流れる兄弟愛
オタクをも惹きつける巧みなストーリーに脱帽
ルイージ救出作戦の元ネタは、JRの電車内モニターや任天堂公式YouTubeなどで公開された『60秒チャレンジ!ルイージを救え!!』という動画である。いわゆる正史としてのゲーム作品で描かれたストーリーではないため、ノーマークだった人も少なくないだろう。
クッパ登場によってマリオ&ルイージの名コンビを引き裂くことで、兄弟愛を高らかに歌い上げると同時に、年季の入ったマリオファンへの目配せもバッチリ。奇をてらったストーリーではなく、王道の物語を堂々と繰り広げつつ、オタクを惹きつける細部も巧みに取り入れた素晴らしい脚本である。
また、兄弟愛は序盤から重要なモチーフとしてある。冒頭のシーンでマリオは、荒くれ者・スパイクにからまれたルイージを見るなり、「今度、僕の弟をバカにしてみろ!着き飛ばしてやる!」と、敵わない相手に立ち向かう。面倒見の良い兄と、ちょっと頼りない弟が織りなす兄弟愛。一見本筋とは関係のなさそうな冒頭のエピソードは、その後の展開の伏線になっているのだ。
ちなみに、スパイクとは、マリオ派生ゲーム『レッキングクルー』(1985~)に登場する、敵キャラである。制作陣のほとばしる“マリオ愛”は、こうしたマニアックな配役からも感じとれるだろう。