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すべてはファンを喜ばせるために…。
大胆な“アングル”に驚く

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そして、特筆してもしきれないのはアクションだ。肉弾戦、ガンファイト、もはや“カー・ジャグリング”と表現したくなる、複雑かつ豪快なチェイスシーン。そんなクルマの使い方をするのか、と観客の想像を軽く超えてくる超絶カースタントが連続する。

今作からシリーズに参入したルイ・ルテリエ監督は、『トランスポーター』で名を馳せただけあり、カーアクションでは抜群のキレを発揮。

ストリートレースのシーンでは、4台のウィンドウを突き抜けてドリーアウトするカメラワークをみせるなど、ケレン味たっぷりの映像で新風を吹き込み、シリーズ最大級の火力でスクリーンを焼き尽くす。

個人的に『ワイスピ』シリーズは、アクション俳優版の『アベンジャーズ』だと感じていた。4作目の『MAX』以降、ドウェイン・ジョンソンにジェイソン・ステイサム、シャーリーズ・セロンにジョン・シナ、そしてジェイソン・モモアと、どこかの王様が「あれ欲しい」と集めまくったようなわがままキャスティングの全部入り映画である、と。

そして、戦った強敵が仲間になっていったり、死んだはずの仲間が生きていたというパターンは、少年マンガ的なクリシェ(紋切り型)だと思っていた。

しかし、この10作目にして確信したのは、『ワイスピ』はプロレス団体であるということだ。新たな選手が次々と入団し、誰もが待ち望んだ対戦カードが実現し、まさかのタッグも生まれる。

そして、現実に起きた出来事をストーリーに組み込み、虚実の境を超えたサプライズとドラマを生み出す“アングル”がある。そのすべてはファンを喜ばせるために仕掛けられていたと考えると、たまらない。

本作のラストには思わず声が出てしまうような驚きが仕掛けられているが、そこで最上級のプロレス的な醍醐味と、このシリーズを同時代的にスクリーンで観れる喜びを改めて噛みしめさせてもらった。たとえ本作からこのシリーズを観た人でも、このサーガがどのような結末を迎えるのかを見届けたいと思うはず。ハリウッド的エンタテインメントの本気を感じさせる、必見の一本だ。

(文・灸 怜太)

【作品情報】

◆出演:ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ジェイソン・モモア、ナタリー・エマニュエル、ジョーダナ・ブリュースター、ジョン・シナ、 ジェイソン・ステイサム、 サン・カン、アラン・リッチソン、ダニエラ・メルキオール、 スコット・イーストウッド、 ヘレン・ミレン、シャーリーズ・セロン、ブリー・ラーソン、リタ・モレノ
◆監督:ルイ・ルテリエ
◆脚本:ジャスティン・リン、 ザック・ディーン、ダン・マゾー
◆キャラクター原作:ゲイリー・スコット・トンプソン
◆製作:ニール・H・モリッツ、ヴィン・ディーゼル、ジャスティン・リン、ジェフ・キルシェンバウム、 サマンサ・ヴィンセント
◆原題:Fast X
公式サイト
配給:東宝東和

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