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リアルなタッチで描かれるフィクション〜脚本の魅力

ジョン・カサヴェテス監督
ジョンカサヴェテス監督Getty Images

あらすじからも分かる通り、本作のストーリーは西部劇などにも見られるありふれたものだ。しかし、本作の場合は、ベタなストーリーを現実のニューヨークの街中に埋没させることで、物語のフィクション性を浮かび上がらせることに成功している(こういった効果を「異化効果」という)。

特に中盤、グロリアが地下鉄でマフィアたちと言い合いになるシーンや、ラストでグロリアが単身マフィアのアジトに乗り込むシーンは妙なリアリティがあり、手に汗握ること請け合いだろう。

また、結末の演出も心憎い。終盤の銃撃戦では、マフィアの手下たちがグロリアが逃げ込んだエレベーターの上から一斉掃射を浴びせる。ここでシーンが切り替わり、ホテルで一人グロリアの帰りを待つフィルに切り替わる。

グロリアは果たしてどうなったのかー。ヤキモキする観客の気持ちを尻目に、しばらくフィルのシーンが続く。そして最後の最後、フィルのもとにささやかな奇跡が訪れる。フィクションがリアルを超越したかのような、なんとも粋で美しいエンディングだ。

本作の物語は後世の作品にも影響を与えている。その最たる例は、リュック・ベッソン監督作品『レオン』(1994)だろう。孤独な殺し屋と家族を皆殺しにされた少女の交流を描く同作の物語設定は、性別を反転させてはいるが、『グロリア』を踏襲している。

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