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テーマは“男らしさ”の呪縛
ボクシングを通して過去のトラウマと対峙する

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1作目で証券会社に勤めるビジネスマンとして登場したアドニスは、オバマ政権時代の黒人男性のイメージを体現したような、知的でスタイリッシュなアスリートとして描かれてきた。今作では、そのアイデンティティが大きく揺さぶられる。

ヘビー級チャンピオンを成し遂げ引退した後も、ジムを運営し、家族と共に豊かに暮らすアドニス。そんな彼のもとに、幼馴染のデイム・アンダーソン(ジョナサン・メジャース)が訪ねてくる。

デイムは少年院時代からの仲だが、アドニスが引き金となった暴力事件に巻き込まれ、長い間、刑務所に服役していた。デイムと再会したことで、若い頃に犯した罪やトラウマが掘り起こされ、激しく動揺する。過去と向き合うために、アドニスは決着をつけるべく再び立ち上がる…というのがあらすじだ。

プレスリリース記載のインタビューによると、ジョーダンは、本作でトキシック・マスキュリニティ(男らしさの呪縛)の問題に取り組みたかった、とコメントしている。この言葉からもわかるとおり、アドニスは、暴力的だった過去や、弱さを他人に見せられない自分と対峙することになる。

デイムは、単に対戦相手というだけでなく、過去の自分の映し鏡でもあるだろう。試合の控え室で、壁を隔ててアドニスとデイムが同時に映るショットは、鏡像関係であることを強調するかのようだ。

また、二人の練習風景をクロスカッティングで映し出すトレーニングシーンでは、アドニスが不自然な場に置かれた鏡と向き合っている。対戦相手に打ち勝つことが、自分の弱さを認めた上で、克服することと連動している。その点、本作はこれまで以上にパーソナルな物語となっている。

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