主人公を取り巻く抑圧的な環境を引いた視点で映し出す
ジュリア・ガーナー演じるジェーンは、映画プロデューサーになる夢を持った新人アシスタントだ。彼女は、業界に影響力を持つ会長の直接的な性被害には遭ってはいない。しかし、さまざまな形で搾取を受けており、抑圧的な環境のなかにいる。
彼女を取り巻く抑圧的な環境は冒頭から、少し引いたカメラで淡々と示される。ジェーンは、まだ暗い夜明け前に出勤し、最後まで職場に残っている。掃除や食器洗いをし、クリ
エイティブとは程遠い雑務に追われ1日が過ぎていく。
男性アシスタントには、厄介な仕事を押し付けられ、会長からは怒鳴られている。激務によるストレスなのか、彼女は父親の誕生日を忘れてしまった。職場で楽しそうに笑う男性の同僚たちと、表情の曇ったジェーンとが随所で対比的に映される。クリエイティブ業界が舞台であるはずのオフィスは、煌びやかでも明るくもない。
この理不尽さを、ジェーンは夢のために飲み込まざるをえない。このことに彼女の周囲の人間も意識的、無意識的に加担する。職場への疑念を押さえ込むようなタイミングで、会長が褒めてくれたことを伝える同僚。父親はジェーンに「すごい機会だし 僕らも嬉しい」と伝える。クリエイティブ業界への憧れ、あるいはやりがいを盾にして、理不尽な仕事を強いられていると言えるだろう。