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温存される搾取の構造
徐々に変化するジュリア・ガーナーの表情に注目

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不条理な搾取の構造とそれを維持する周囲の歪さは、会長が性加害者であり、ジェーンがそれに間接的に関与してしまっているのではないかと気づいた時に、もっとも露わになる。悩んだ彼女は、マシュー・マクファディンが演じる人事部長、ウィルコックに相談に行く。ウィルコックは、ハラスメントの訴えをはぐらかしただけでなく、彼女が自分より目立つ新人に嫉妬していると罵る。

恐ろしさすら感じるシーンだ。会話をずらし煙に巻くだけでなく、告発した人物を責め立て無効化する。彼は脅しのように言う。「今の君の仕事に400人が応募してくる」。オフィスに戻ると、男性の同僚たちだけでなく、会長も彼女が告発したことを知っており、ジェーンは謝罪のメールまで要求される。このようにして、搾取とハラスメントの構造は維持されているのだ。

恐ろしい場面ではあるが、特にここでのジュリア・ガーナーの演技は素晴らしい。ジェーンの当初の期待が、恐れと痛みを伴う表情へと徐々に変化していく。カメラもこれまでよりも少し寄り気味で、表情の変化を見事に捉えている。

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