オリジナルアニメに通底する差別批判のメッセージ
ラストシーンでは、海面に上がってきた人魚と人間が、穏やかな視線で見つめ合い、人間となったアリエルが、結果的に異なる種族の架け橋となるといったハッピーエンドが描かれている。制作陣は映画を通して、次のようなメッセージを投げかけたかったのではないだろうか。
「人種も、はたまた、生物種も関係ない!みんな、仲間!」
いつになってもなくならない人種差別。アリエル役を黒人の女優が演じることによって本作を叩いている者がいるとすれば、オリジナルアニメにも通底するこのメッセージを、今一度噛みしめてほしいと願う。
さて、アリエルに扮するハリー・ベイリーの話に戻るが、演技力・歌唱力ともに素晴らしい。筆者は字幕版を鑑賞し、演者本人の歌唱を堪能したわけだが、きわめて日本人好みの歌声だと感じた。
マライア・キャリーのような「私、上手いのよ!」と誇示するような歌声でもなく、ヘタウマでもない絶妙なバランス。声質も柔らかく、彼女の歌声を聴くだけでも劇場に足を運ぶ価値はあると断言できる。