人間になってからも努力や成長の跡が見えない…。
アリエルに共感しにくいワケ
ハリー・ベイリーの名演が素晴らしい実写版『リトル・マーメイド』だが、アリエルのキャラクターにはどこかしっくりこないものがある。単純に主人公としての魅力が足りないのだ。
まず、人間の世界に興味があり、海面に上がった彼女は、船の海難事故からエリック王子を救い、お互い一目惚れをする。そして、叔母である魔女・アースラの策略により、人間となったアリエスは、紆余曲折ありながらも、エリック王子と結ばれる。その上で、地上に攻めてきた魔女・アースラを撃退する。
ざっくりとしたストーリーの流れは以上だが、残念ながら、筆者はアリエルに共感することができなかった。なぜなら、アリエルは、冒頭とラストだけ取ってつけたかのような活躍を見せるものの、全編を通して主体的に行動をすることはなく、人間になってからも努力や成長の跡が見えないからだ
原典が童話ゆえ、前前前時代的なストーリーであることは重々承知しているが、実写版『リトル・マーメイド』が、アリエルというキャラクターを現代の女性が憧れる存在として描き得ているかは疑問だ。反面、そんなアリエルにゾッコンなエリック王子役のジョナ・ハウアー=キングの、なかなか彼女にキスできないヘタレ芝居は秀逸である。
とはいえ結局、彼も活躍に乏しく、船上でアリエルへの愛をやたらハイクオリティーな歌唱力で歌うシーンのみが、最大の見せ場と言えよう。