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孤独をバネにするパワー
悪役・アースラが主役を圧倒するワケ

女優のメリッサ・マッカーシー
女優のメリッサマッカーシーGetty Images

最後に何と言ってもピックアップしておきたいキャラクターは、アリエルの叔母である魔女・アースラ(メリッサ・マッカーシー)だ。彼女はアリエルの父・トリトンにより、人魚の世界を追放された。その理由はボカされているが、かねてより悪事を企てる邪悪な性格の持ち主だったのだろう。

そんな彼女は、アリエルに対し「その美声と引き換えに、3日間だけ人間にする」といった魔法をかける。さらに、その期間中に「エリックとキスを交わせば、声が出るようになる」という賭けを提案する。賭けに負けた場合、アリエルはアースラの人質となり、トリトンに王の座を譲るように脅迫することを約束させられる。

ミュージカルシーンでは、「私が海の支配者だ!」と、豪快に歌う。森公美子とシンディ・ローパーが合体したかのような、オンリーワンな特殊メイク。最終的にはなぜか巨大化し、アリエルたちを襲う、良い意味での古典的なラスボスとしての振る舞いで、観る者をワクワクさせてくれる。

ヴィランとしての役割は、完璧である。女性が鑑賞し、アリエルとアースラのどっちに憧れ・共感するかと訊かれたら、アースラに軍配が上がるのではないかとさえ筆者は思う。

「別にアースラ、野心はあるけど、嫌なやつでもねーし。そもそも追放されて、可愛そうじゃない? むしろ、孤独をバネにするパワーに憧れる」と、現代の若者たちは共感するのではないかと。

ヴィランの方が魅力的という作品は往々にしてあるものだが、本作もその辺をあえて狙って製作されたのだとすれば、実に興味深いところである。

(文・ZAKKY)

【作品情報】

監督・脚本:ロブ・マーシャル
出演
アリエル:ハリー・ベイリー
エリック王子:ジョナ・ハウアー=キング
セバスチャン(声):ダビード・ディグス
スカットル(声):オークワフィナ
フランダー(声):ジェイコブ・トレンブレイ
トリトン王:ハビエル・バルデム
アースラ:メリッサ・マッカーシー
音楽:アラン・メンケン
編集:ワイアット・スミス
撮影監督:ディオン・ビーブ
製作総指揮:ジェフリー・シルバー
2023 年製作/135 分/G/アメリカ
原題:The Little Mermaid
配給:ディズニー
翻訳:松浦美奈 映倫:G
公式サイト

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