タランティーノとスピルバーグ
2人の偉大なフィルムメーカーの足跡
対して、スピルバーグ監督は『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』、『ジョーズ』、『ジュラシック・パーク』、『E.T.』といった大作を製作する一方。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』、『ブリッジ・オブ・スパイ』、そして最近の作品『フェイブルマンズ』といった、比較的小規模なプロジェクトの製作も行っている。その中で『ジョーズ』は、初の夏の大ヒット作品となっただけでなく、人気映画や、重要な映画、などのランキング上位にランクインすることの多い名作となった。
また、この映画に敬意を評し、『ジョーズ』に登場する「ブルース」というサメの25フィート(7.62m)もの巨大模型が、2020年に、アメリカ最大級の映画博物館「アカデミー映画博物館」に建てられた。同館では、プリツカー賞受賞建築家であるレンゾ・ピアノがデザインを行った建物内に、4600平米を超える展示スペースが備えられている。また、映画の歴史に関する没入型常設展や、企画展など様々なプログラムも行われている。
一体、何が彼らの「映画」と「フィルム」の違いを決定するのだろうか。「フィルム」とは、芸術的な用語で、芸術として真剣に取り組み、賞が集まる映画を指すのだろう。「映画」という言葉は、商業主義、大衆のための娯楽を意味する場合が多いことが考えられる。
しかし、現実的には、ほぼ全ての大ヒット映画は投資を必要としているのだ。表現したい個人的なビジョンを持つアーティストにより製作され、経済的利益のために製作が行われる。「映画」というのは広い意味で、「フィルム」で撮影された映画も、デジタルで撮影された映画も含まれると言っていい。
「映画」と「フィルム」を分けて考え評価を行うのはタランティーノ監督だけでなく、多くの映画史研究家もまた、『ジョーズ』を「史上最高の映画」の1つに挙げることに躊躇することはないだろう。つまるところ、この2つの用語の違いは、それぞれの人が、どのように区別するかにより、決まるのだ。
クエンティン・タランティーノ監督は、10作品目として、『The Movie Critic(原題)』というタイトルのオリジナル脚本を書き終え、現在、今秋に予定されている撮影に向けて準備中だという。名作を産んだ巨匠監督の最後の作品は、大きな注目を集めることが期待でき、早くもその内容が気になる。
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