魂の救済の機会を待つ…。
主人公のキャラクターを浮き彫りにする部屋の様式に注目
ポール・シュレイダーの作品に馴染みのある人ならお分かりの通り、これはカウンティングを駆使したギャンブル映画、ではもちろんない。実際、スリルと興奮をもたらすようなギャンブルのシーンはないに等しい。『カード・カウンター』は、罪の意識に囚われ、贖罪と復讐、そして魂の救済の機会を待つ男を描いた、実にシュレイダーらしい物語である。
オスカー・アイザック扮するウィリアム・テルは、8年間の服役中に学んだカウンティングで、各所のカジノを渡り歩くギャンブラーだ。しかし、いつも大勝ちはせず、ほどほどに勝つだけでモーテルに戻り、その日のことを日記につける。滞在するモーテルでは、椅子やベッドを白い布で縛り、部屋から一切の光や華やかさを排する。それはまるで彼が服役していた刑務所と同じような場所に思える。
彼は、マルクス・アウレリウス『自省録』を読んでいたが、その生活はまさにストア派(紀元前三世紀始めのギリシャで興った哲学の流派)の禁欲主義を実践しているかのようだ。カジノは煌びやかだが、そこには窓がない。白く覆われたモーテルの部屋や刑務所と同様、この映画のカジノは禁欲的かつ非日常的な空間であり、そうした空間にのみ生きているテルは、宗教者のようでもある。