主人公のトラウマを表現する歪な映像
プロダクションノートによれば、テルは『タクシードライバー』のトラヴィスや『魂のゆくえ』のトラー牧師と同様、「ずっと何かを待っていて、ある種の非日常を生きている人物」だそうだ。ある日のモーテルで、彼は日記を書きながら自問する。「罪に終わりはあるのか。罪滅しの努力に限界はあるのか?」と。
テルの罪とはなにか。彼はイラク戦争に従軍し、アブグレイブ刑務所の囚人虐待に関与した。その罪で裁判にかけられ有罪判決を受けたのである。この事件は、彼に罪の意識とトラウマを与えた。超広角レンズを使い、ゴーグルをつけずに見たVR映像のような歪んだ夢の風景が、当時の凄惨さと心の傷の深さを表現している。ここでも、ベトナム戦争のトラウマに囚われた『タクシードライバー』との共通点が垣間見える。
贖罪と救済の機会は、二人の人物と遭遇したことで訪れる。一人はかつて拷問の仕方を指南したにもかかわらず罪を逃れたジョン・ゴード(ウィレム・デフォー)、もう一人はゴードのせいで父親を亡くし復讐を企てる若者カーク(タイ・シェリダン)だ。
カークはテルに復讐を持ちかけるが、テルはこれを拒否し、代わりにギャンブルに同行するよう提案する。カークとその母親の借金を返すために、テルは、ラ・リンダ(ティファニー・ハディッシュ)の求めに応じ、ポーカーの世界大会への出場を決める。