幻のスーパーマン登場に泣きつつ笑う…
混乱したドラマが落ち着き先は母への想い
この「マルチバース」という概念を、わかりやすく可視化するという試みで成功したのが、マーベルの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』だった。
いままで映画化されたスパイダーマン俳優たち、トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド、そしてトム・ホランドの3人を実際に共演させることで、パラレルワールドを表現。
観客はスクリーンと現実との境がなくなり、歴史の重みと感動さえ呼び起こすという離れ業を見せてくれた。
その手法を、『ザ・フラッシュ』でも臆面もなく取り入れている。
マイケル・キートン版のバットマンを筆頭に、歴代のDCヒーローを演じたスターたちをチラ見せ。個人的に、ファンにとってのトリビア的な実話を実写化したといえる幻のスーパーマンが出てきた時は、もう笑っていいのか、泣いていいのかわからなくなってしまった。
さらに本作では、そのタイムラインや多元宇宙を斬新なビジュアルで表現しているところも説得力に貢献しているといえる。
そんな複雑な要素のすべてを、バリーの母親への想いという、だれもが理解できるドラマに集約していく。
これは『IT “それ”が見えたら終わり』というホラー作品で、観客を心底怖がらせながらもノスタルジー的な甘酸っぱさを染み出させたアンディ・ムスキエティ監督の演出力の賜物だろう。
『ザ・フラッシュ』って、どんな映画? と聞かれて、説明するのが難しい作品だとは思う。アメコミだけではない膨大な情報量が詰まっており、さらに紆余曲折ありすぎたおかげで作品の背景そのものがマルチバース的になってしまっている。
それでも映画館に行って、スクリーンの前に座っていれば、誰もが楽しめるはずだ。安心して、その超スピードを体感して欲しい。
【作品情報】
監督:アンディ・ムスキエティ(『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)) 出演:エズラ・ミラー/ベン・アフレック/マイケル・キートン/サッシャ・カジェ/マイケル・シャノン
配給:ワーナー・ブラザース映画
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