「熊の覆面を被った、ただの変質者」
寂しさ故に殺人鬼へと変貌
主人公であるクリストファー・ロビンは、幼い頃に山の中にある廃屋で現実か虚像かわからないような者たちと、日々、遊んでいた。プーさんはロビンの遊び相手として登場する。
大人になったクリストファー・ロビン。「プーさんたちは絶対にいたんだ!」と、彼女であるメリーを思い出の廃屋に連れてゆく。「そんな者たちはいないわよ」と呆れるメリーだったが、馬鹿なクリストファーのせいで、殺熊鬼と化したプーさんに、早々に殺されてしまう…。プーさんの変貌した姿と行為に、恐怖するクリストファー。
プーさんは、幼い頃に一緒に遊んでいたクリストファーが、いつしか疎遠になったことに異常な憎しみを持っており、自分のことを「見捨てた」「離れていった」という感情を抱いていたことを明かす。要するに「あんだけ、仲よかったじゃねーか!」的な感情が爆発し、殺人熊へと変貌したのだった。
このような「いつの間にか疎遠になっている」という人間関係は、実際の社会の中でも、往々にしてある。そして、見向きもされなくなり、寂しくなった者が、かつて蜜月の時を過ごした相手を殺してしまう。そんな鬱屈した感情を、プーさんに仮託したリース・フレイク=ウォーターフィールド監督の発想は、褒められたものかどうかはわからんが、着眼点のクレイジーぶりは、見事である。
また、プーさんのビジュアル面にも注目したい。原作ではシャツのみを着ているプーさんだが、本作ではズボンまで着用している。その結果、熊ではなく、ただの熊の覆面を被った太った変質者にしか見えないのだ。だからこそ、余計に怖い。そうしたことも計算に入れているとすれば、リース・フレイク=ウォーターフィールド監督、恐るべしである。