「え…プーさんだけじゃないんかい!」
ピグレットも殺人鬼に
さらに、プーさんの親友・豚のピグレットも殺豚鬼と化しているという、これまた酷すぎる設定がなされているわけだが、ここにも少し「待った!」をかけたい。
その設定自体に不服があるわけではないのだが、プーさんとシルエットが似ており、特に暗闇の中ではどっちが誰を殺しにかかっているのかよくわからないのだ。「どうせならピグレットもトチ狂わせよう」という制作陣の気持ちもわかるがプーさんだけに焦点を絞った方が、ストーリーはわかりやすく進んでいたのではないだろうか。
さて、物語は、中盤に至ると、クリストファーたちとはまったく関係のない近くに旅行に来た4人の女性チームたちを描くパートへとシフトチェンジする。案の定、彼女たちもプーさんとピグレットに次々と殺されてゆく。
そのうちの1人マリアは、かつて変質者に着きまとわれていた。彼女が就寝している最中、家に忍び込んでくるような変態ジジイだ。こいつがまた気持ちが悪い。その後マリアは、変態ジジイにまつわる自身のトラウマを生前の友人たちに打ち明けるのだが、はっきり言ってこのくだり、いるか!? というエピソードである。
「この後、その変態ジジイよりもっと怖いプーさんが現れるよ」という前フリだったのかもしれない。あるいは、リース・フレイク=ウォーターフィールド監督は、プーさんを含めた気持ち悪いおじさんの愚かさをこれでもかと描き込むことで、若い女性が殺されていくサマを嬉々として眺めるスプラッター好きの中年男性、つまりは本作の観客に挑発的なまなざしを向けているのかもしれない。