大ヒット映画『ターミネーター2』(1991)といえば、映画史上で最高の続編作品の1つだ。監督を務めた巨匠ジェームズ・キャメロン監督は、本作を製作するにあたり、俳優アーノルド・シュワルツェネッガーのあるアイデアを却下したという製作秘話があったという。早速現地のメディアを参考に、その詳細を確認していく。

若かりし日のシュワルツェネッガーを驚かせたキャメロン監督の信念とは？

共同脚本家兼監督のジェームズ・キャメロンが製作を行った映画『ターミネーター』(1984)。本作で俳優アーノルド・シュワルツェネッガーは、殺人サイボーグ、ターミネーターT-800を演じる。

T-800は、未来の人類対機械軍の戦争で、人類勝利の立役者として英雄となる「ジョン・コナー」を抹殺するため、ジョンが産まれる前の時代に戻り、ジョンの母であるサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)を殺すため未来から送り込まれた存在だ。

その後、続編映画『ターミネーター2』(1992)で、俳優エドワード・ファーロングが10歳のジョン・コナーを演じ、物語はさらに進展を迎える。

映画『ターミネーター2』では、1作目とは逆に、シュワルツェネッガー演じるターミネーターT-800型が、「ジョン・コナー」を、液体金属で作られた高度なサイボーグT-1000(ロバート・パトリック)から守る。

今ではアカデミー賞の音響編集賞、録音賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、ヒューゴー賞映像部門など、数々の賞を受賞した名作として評価される『ターミネーター2』。

しかし、製作当時は、1作目で恐ろしい敵役を演じたシュワルツェネッガーを、2作目でヒーローに仕立て上げるというストーリーの大きな変化により、映画を視聴する観客に違和感を抱かせてしまい、『ターミネーター』という作品を破壊するリスクも持っていたのだ。

米IndieWireよると、このアイデアを生んだジェームズ・キャメロン監督について、シュワルツェネッガーは以下のように述べたようだ。

「ジェームズ・キャメロン監督は本当に天才的な脚本家です。彼は2作目の素晴らしいアイデアを持ってきた。最初は2作目で僕がヒーローになるというアイデアが、素晴らしいものになるとは思っていませんでした。でも彼は『君を良いターミネーターにしたい』と言ったんです」

この頃、俳優シュワルツェネッガーは、映画『ロッキー』や、映画『ランボー』シリーズで知られる俳優シルベスター・スタローンと同じアクションスターであることから、ライバル関係にあった。

シュワルツェネッガーは、スタローンが映画『ランボー』シリーズの主人公ジョン・ランボーとして、どれだけ多くの悪党を殺してきたかを考慮すると、少なくとも1作目の『ターミネーター』の倍以上、作品内で人を殺さなければ、『ターミネーター2』の出来はイマイチなものになってしまうと心配していたようだ。

「私は『良いターミネーター』ってどういう意味だ？ 1作目では68人を殺した。2作目では少なくとも150人を殺さなければならない。前作の上を行くんだ！ 喉を切って、大砲を撃って、車で轢き殺すんだ。とキャメロン監督に言いました」

「私はスタローンを凌駕しなければならなかった。私の使命は、スクリーンの中でたくさんの人を殺すことで”ナンバーワン”になることだと言いました」と述べている。

また、続編作品で、自分のターミネーターが、人を一人も殺さないと説明を受けた時に、それがどれほどバカげたアイデアだと思ったかと回想している。

それでも、キャメロン監督は自分の信念を貫き、もっと暴力的なシーンを入れたいと主張する、シュワルツェネッガーに対し “とても病んでいる “と発言をしたようだ。

シュワルツェネッガーは当時のことを振り返り「キャメロン監督に”アーノルド、やめろ。君はとても病んでいる。『ターミネーター2』では、君は一人の人間も殺さないようにする”と言われました」

「私は”そんなバカなこと聞いたことがない。僕が誰も殺さないで、どうやって『ターミネーター2』を製作するんだ？せめて、形だけの死体くらい入れてくれ”と言いました」と語ったようだ。

この映画は結果として映画史上に残る最高傑作の1つとなった。ここまでアイデアに反対するシュワルツェネッガーに対しても、自分の信念を曲げないキャメロン監督。彼の見ていたビジョンが続編作品を製作するにあたって、何かを掴んでいたことは、間違いなく明らかだ。

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