過激さの中に懐かしさを感じる
好きな人にはたまらないB級映画
『マッド・ハイジ』は、エクスプロイテーション映画の要素を愚直に取り込み、スイス要素もチーズだけでなく、時計、ビクトリノックス(世界的ナイフメーカー)、ホルンにトブラローネ・チョコレートとすべて下品なアプローチで表現。
やっていることは過激なのだが、どこか懐かしいテイストもある。これは、観ているこちらが年をとってしまったからなのか。
元ネタとなるのは50~70年代くらいに製作されたエクスプロイテーション映画なのだが、それらの作品を愛でていた90年代くらいの記憶も蘇る。要は、懐かしさの入れ子構造になっているので、感情がバグってしまうのだ。
過激なシーンも「こんなのがお好きなんですよね?」と差し出されているようで、ちょっと興ざめするような瞬間もある。このタイプの作品は「俺はこんなことがやりたい」という常軌を逸した情熱だけで撮り切るところに味わいがあり、より多くの人が関わるため、肝心のところで角が取れた表現が散見されるクラウドファンディング映画ならではの限界も感じる。
とはいえ、好きな人にはたまらない作品であることは間違いない。ひとりで映画館に行き、酒とチーズを喰らいながら、暗がりでうごめく他の客と「お互い、好きですな」という妙な連帯を感じながら鑑賞したい。
(文・灸 怜太)
【作品情報】
監督: ヨハネス・ハートマン、サンドロ・クロプシュタイン
製作:ヴァレンティン・グルタート エグゼクティブ・プロデューサー:テロ・カウコマー『アイアン・スカイ』
出演:アリス・ルーシー、マックス・ルドリンガー、キャスパー・ヴァン・ディーン、デヴィッド・スコフィールド、アルマル・G・佐藤
2022|スイス|92分|スコープサイズ|5.1chデジタル|MAD HEIDI(英題)|配給:ハーク/S・D・P| R18
公式サイト
マッド・ハイジ公式 Twitter:@madheidi_jp「#18禁ハイジ」
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