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「俳優なんてクソ食らえ、音響部を救え」映画『ジョーズ』、制作中に起きた沈没事故の一部始終とは? スピルバーグ監督が回顧

text by 編集部

スティーブン・スピルバーグ監督の代表作の一本であり、夏映画の代名詞的な作品である『ジョーズ』。実は、本作製作中には、様々な問題が起こっていた。今回、スピルバーグ監督は、その中でも特に大きな事件であった、「ボート沈没事件」について現地メディアに語ったようだ。Screen Rantを参考にその詳細内容を確認していく。

ボートは2分で沈没…。かさむ制作費

映画『ジョーズ』の1シーン【Getty Images】
映画ジョーズの1シーンGetty Images

1975年に公開された、映画『ジョーズ』は、俳優ロイ・シャイダー演じるブロディ署長、俳優リチャード・ドレイファス演じる海洋学者、そして俳優ロバート・ショウ演じる風変わりなベテランの船乗りが、オルカ号というボートでホオジロザメを追い詰める姿を描いている。

映画『ジョーズ』は、史上最も成功した映画のひとつであり、夏の大ヒット映画として多くの人に知られているが、本作の製作過程では、多くの問題が起こった。最近の米Vanity Fair誌とのインタビューで、スティーブン・スピルバーグ監督は、映画『ジョーズ』の撮影中に起きた、ボートでの災難による事故について詳しく語った。

スピルバーグ監督は、スピードボートがオルカ号をあまりにも速く引っ張ったため、板が剥がれ、水が流入し、2分でボートが沈没した、と述べている。その間、キャスト陣とスタッフは、両方とも船上で救命ボートを求めていた。スピルバーグ監督は、この事件について、以下のように述べた。

「俳優たちが“ボートを出せ、出せ、ボートを出せ!”と叫んでいた瞬間を鮮明に覚えている。サウンド・ミキサーを担当するジョン・カーターが、“俳優なんてクソ食らえ、音響部を救え!”と言い放ち、沈没するオルカ号から、皆を引き上げようと、ボートのクルーが奔走している間に、足首、そして膝まで水に浸かりながら、レコーダーを抱えて沈んでいくジョンの姿が、今でも目に焼き付いている。数ヵ月後、彼はその手でオスカーを手にしていたよ」

しかし、映画『ジョーズ』の製作中に起きた問題は、キャストとクルーを乗せたオルカ号の沈没事故だけではない。実は『ジョーズ』は、史上初めて海洋で撮影された映画作品であり、予算やスケジュールを大幅に超過する様々な問題が発生したのだ。

主な問題となったのは、悪天候や海水の影響で頻繁に故障する、機械仕掛けのサメであった。これらの問題により、製作費はさらに300万ドル(約4億円)掛かり、本作製作の総予算900万ドル(約12億円)の3分の1を費やしたと言われている。

それだけでなく、撮影機材は海水で深刻なダメージを受けたり、撮影に無関係な船がしばしば流れ込んでしまったり、キャストやスタッフには、船酔いや、日焼けなど、製作途中で起こる問題は絶えなかった。

しかし、室内水槽や、CGI技術を使用するのではなく、実物大の機械のサメを使用した海上撮影に、こだわりを持ったスピルバーグ監督の製作姿勢が、映画『ジョーズ』を、視覚的に説得力の強いものにし、観客に本物の危機感を与えたのだろう。

映画『ジョーズ』は現在Netflixにて絶賛配信中だ。暑い夏を、スリラー映画の鉄板である『ジョーズ』と共に過ごしてみてはいかがだろうか。

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