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ドキュメンタリーとフィクションを交えて描くミャンマーのリアル

© The Myanmar Film Collective
© The Myanmar Film Collective

本作は、それらの映像をふんだんに盛り込み、圧政に苦しむ市民のリアルを、「ミャンマー・フィルム・コレクティブ」と称する10人の匿名の映画作家たちが繋ぎ合わせながら、ドキュメンタリーとフィクションを交えて製作された作品だ。

ある者は抗議デモに参加したことを理由に指名手配され、引き裂かれる恋人同士。逮捕状もなく連行されようとしている母を守るため、泣きながら抵抗する子どもたち。また、コロナによる渡航規制がある中で、単身、隣国タイに渡り、隔離中のホテルで思いを綴る女性などの様子が生々しく描かれている。抗議の意思を示す三本指を立てる不服従運動に対し、軍や警察は暴力で対抗する。しかし、民衆は、丸腰であっても、銃殺されることも全く恐れていないように見える。

コロナ禍での抗議活動を象徴するマスクとヘルメット姿の人物のシルエットを背景に、「SAVE MYANMAR(ミャンマーを救え」「STOP KILLING OUR PEOPLE(私たちを殺すな)」「RESPECT OUR VOTE (我々の選挙権を尊重せよ)」「RELEASE OURLEADERS(私たちのリーダーを解放せよ」「WE WANT DEMOCRACY(私たちは民主主義を望んでいる)」といったメッセージは、まさに、この映像が世界に発信されることを意識しており、さらにアニメ描かれる“蝶”が、「私たちの声が届きますように」という思いを表現している。

そして、一部の若者は、ヤンゴンを離れ、ジャングルに身を隠しながら、軍事訓練を受け、“その時”を待っている…。

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