「ナンセンスだ…」ChatGTPを一刀両断。クリストファー・ノーラン、AIが生成した自身のパロディストーリーに言及
クリストファー・ノーラン監督は、映画『ダークナイト』3部作のようなヒット作を連発し、『インセプション』や『インターステラー』のような示唆に富んだ作品でも有名だ。映画界でも独自のポジションを獲得しているそんな彼が、現在映画業界を揺るがすAIについて言及したようだ。米Movie Webを参考に、その詳細を解説していく。
AIが作ったノーラン監督風のストーリーに対する監督の反応とは?
現在、クリストファー・ノーラン監督が製作を務めた最新作『オッペンハイマー』が、米国で大ヒット上映中だ。
そんなクリストファー・ノーランのこれまでの映画作品のストーリーを基に、人工知能が生成を行った新しいストーリーを、監督自身が読んだという。
AIが製作したその新しい映画ストーリーは、ノーラン監督の映画『インセプション』や、映画『TENET テネット』から多くのヒントを得ており、その内容は、俳優キアヌ・リーブス主演の映画『マトリックス』と、同じようなストーリーとなったそうだ。
その気になるストーリーは、”ネクサス “と呼ばれるAIが、全ての人間の心を繋ぐ秘密のネットワークを通じて社会を支配し、それと争うハッカーが、AIの支配から人類を救うため、ネクサスの核を見つける、というものだった。
ノーラン監督は、このストーリーに対し、「 “cobblers (ナンセンス)”だ。そう、まったくナンセンスだ」と述べ、AIが製作した物語についてそれ以上何も語らず、AI全般の話題に移った。
インタビューの中でノーラン監督は、「AIは我々にとって非常に強力なツールになりうると感じている」と語り、有名なChatGPTの論争を引き合いに出し「地方紙に記事を書けるチャットボットの登場で、突然、危機的状況に陥った」と続けて述べ、「AIの最大の危険性は、私たちがAIに、神のような特性を与えてしまうことだ」と語り、そうすることで私たちは「自分自身を解放してしまう」のだと説明した。
AIは、非常に強力なツールで、このような万能とも言える、新たな存在を作り出すことは、ある意味では、私たちの持つべきであった責任を「解放」することとなるのだろう。しかし、ここで説明する、”責任の解放”により、未来に何が起こるのかは、起こってみるまではわからない。
ノーラン監督は、現在SAG-AFTRA(全米映画俳優組合)のハリウッド・ストライキに参加している脚本家組合の組合員の一人として、映画製作におけるAI使用に懸念を表明している。
映画作品にさえAIのコントロールが及んでしまうことは、良いことだと言い切ることは困難だ。というのも、あらゆる業界にAIの力が及ぶことで、人々には何の力もなく、何かをする必要さえもない、と感じさせてしまう可能性があるからだ。
しかし、ノーラン監督は「芸術的な領域におけるAIの使用は、強力なツールになりえるが、最終的に人間の創造性に取って代わることはない」と発言。
彼は、映画監督として常に新しい技術を受け入れ、映画撮影の新しい領域を開拓してきたため、AIなどの急速に発展する技術を、映画製作に利用することを擁護もしている。
ノーラン監督は、AIは映画制作者にとって非常に有用ではあるが、決して彼らの代わりにはならないと強く考えているようだ。
また、上記したような、AIが製作を行ったノーラン映画のストーリーを見る限りは、人工知能が生身の人間のストーリーテリングや、芸術に込める魂には、敵わないと言っていいだろう。
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