興行収入最大15%減少!? コロナに続くストライキが映画産業に影響か。スター不在の宣伝キャンペーンにより興行悪化の傾向
現在ハリウッドで起きている、全米脚本家組合と全米映画俳優組合のストライキにより、映画作品の宣伝活動に制約が生じている。映画作品の興行収入は最大15%減少する可能性があり、今後映画産業全体へのさらなる悪影響が予想されているようだ。早速米The Hollywood Reporterを参考に、その詳細内容を確認していく。
ハリウッドのストライキが今後の映画産業に与える影響とは?
今年7月下旬。映画配給会社パラマウント・ピクチャーズ敷地内では、日本公開を9月22日に控えた映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』(2023)のプレミアが開かれていた。
しかし、同作の製作を務めたジェフ・ロウ監督は、家族向けの特別試写会と銘打たれたこのイベントを、たった一人でこなす必要があったようだ。
現在ハリウッド全体では、全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の二重ストライキが続いており、映画関係者は、作品広告のためのメディアツアーを中止せざるを得ないのだ。
その影響で、ハリウッドスターや脚本家が参加しない、プレミア公開やメディアツアーが発生するなどし、作品の興行収入に悪影響を及ぼし始めている。
複数のスタジオ関係者が米The Hollywood Reporter紙に語った内容では、タレント主導の宣伝が劇的に落ち込むため、映画作品の興行収入自体が、15%程の打撃を受ける可能性があるという。
8月2日に、米国公開を迎えた映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』(2023)は、5日間で4310万ドル(約59億円)という立派なオープニングを記録。
しかしその反面、映画関係者は、宣伝規制のせいで700万ドル(約10億円)から1000万ドル(約14億円)の損失が出るとも予想している。
別スタジオのマーケティング担当幹部は、いくら有料広告を打とうが、それがスター達の行う個人的なSNSへの投稿や、インタビュー、その他のプロモーションなどの活動で起こる宣伝効果を超えることはないと言う。
「映画の宣伝をしてくれるスターがいないことは、キャンペーン全体にとって大きなマイナスです。タレントが映画について語るという文化的インパクトを失うのです」とも述べている。
これから年末にかけて、様々な映画作品が公開を迎える。
例えば、俳優オーランド・ブルームや、デヴィッド・ハーバーが出演する映画『グランツーリスモ』や、女優ゼンデイヤ主演の、ルカ・グァダニーノ監督が製作を務める映画『チャレンジャーズ』。
この2作品は、どちらもその公開を延期している。
女優ゼンデイヤはソーシャルメディア上で大きな影響力を持ち、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画『デューン 砂の惑星 PART2』にも出演している。
同作の製作会社であるレジェンダリーは、俳優ティモシー・シャラメや、オースティン・バトラーを含む、同作のキャストにより行われるプレスツアーに、大きなこだわりがあると言われている。そのため、完璧なタイミングが来なければ、再びその公開日が延期される可能性は十分ある。
また、レジェンダリー・ピクチャーズとワーナー・ブラザースは、今年9月初旬までにマーケティングと宣伝キャンペーンを本格化させる必要があるため、映画『デューン 砂の惑星 PART2』の公開日に関しては、早急に決断を下す必要が出てくる。
内部関係者によると、ワーナーや他のスタジオは、現在コロナパンデミックの影響から回復の真っ最中であることを考慮し、映画作品の公開を延期することを嫌っているという。
さらには「スターが映画の宣伝に積極的に参加できなくなったことで、映画業界は間違いなくピリピリしている」と、映画興行収入の測定を行う米コムスコアの興行アナリスト、ポール・ダーガラベディアンは話している。
ハリウッドでのストライキ問題が続く限り、映画の興行収入に影響がで続けることは、間違いないだろう。
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