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大物俳優ブラッドリー・クーパーに批判の嵐!?監督を務めた伝記映画『マエストロ』。物議を醸した予告編の内容とは?

text by 編集部

映画『アリー/ スター誕生』や、映画『アメリカン・スナイパー』などに出演する、人気イケメン俳優ブラッドリー・クーパー。彼が5年という年月を掛け、製作した伝記映画『マエストロ』。現在、彼が鼻に装着した義鼻について、論争が巻き起こっている。今回は現地メディア米Movie Webを参考に、その詳細を確認していく。

俳優が自身と違う人種を表現するのは今後困難に!?

俳優のブラッドリー・クーパー【Getty Images】
俳優のブラッドリークーパーGetty Images

映画『マエストロ』監督を務めた俳優ブラッドリー・クーパーは、映画『アリー/ スター誕生:アンコール・バージョン』(2018)で長編監督デビューを果たし、オスカー3部門にノミネート。その後、アメリカの有名なクラシック音楽界の巨匠、ユダヤ系米国人指揮者・作曲家の故レナード・バーンスタインの伝記映画を監督・主演したいと考え、それを実現した。

本作は、20世紀クラシック音楽界の巨匠レナード・バーンスタインのキャリアと人生を、彼の妻フェリシア・モンテアレグレ(キャリー・マリガン)との、結婚から彼女が亡くなるまで(1951年〜1978年)の、2人の関係を中心に描いた作品となっている。

日本では、2023年11月22日に劇場公開され、その後Netflixでストリーミング配信される予定の本作。

俳優ブラッドリー・クーパーは今回、共同脚本、監督、主演を務めるに加えて、5年以上という非常に長い時間を掛けて製作した。このことから、彼が本作に注いだ多大な情熱と愛や、作家レナード・バーンスタインのキャリアと人生を表現するためにその本質を捉えようとする忠実さが伺える。

また、映画『アイリッシュマン』、映画『シャッターアイランド』などを手掛けるマーティン・スコセッシ監督。更に、映画『ジョーズ』、映画『E.T.』を手掛けるスティーブン・スピルバーグ監督がプロデュースに関わる本作は、世間から大きな注目を集めている。

しかしそんな注目作品である本作の議論は、映画中でクーパーが装着する義鼻に集中している。

映画俳優は、演技の一環として、自分ではない別の人物を演じることを求められるが、先日、この映画の予告動画が公開された際、批判の声が上がった。クーパーが装着した義鼻に対し、非ユダヤ人俳優がユダヤ人らしく見せるために義鼻を使用するのは、問題だというものだ。

この義鼻の装着には、ユダヤ人のステレオタイプを広める考えだという声や、非黒人が役作りのために顔を黒く塗る「ブラックフェイス」同様、これは「ジュー(ユダヤ人)フェイス」だとの批判の声も上がっている。この批判について、バーンスタインの子供達が、クーパーを擁護。バーンスタインの子供たちは下記のように話している。

「ブラッドリー・クーパーは、私たちの父を題材にした映画を製作するため、私たち3人を映画製作という旅路に同行させてくれた。彼の努力に対する誤った表現や誤解を目の当たりにして、私たちは心を痛めています」

「レナード・バーンスタインの鼻は確かに大きく立派なのは事実だ。クーパーはメイクアップでその特徴を強調することを選択した。しかしこのプロジェクトに5年以上を費やした彼の誠実さが疑われるものではない。」

本作の予告動画第1弾は、当時の時代に合わせてこだわり抜かれた映像や、音楽が盛り込まれ、視覚的にも素晴らしいものである。同時にレナード・バーンスタインの天才的な才能と、人生に没頭した喜びも捉える、非常に美しく、説得力があり、感情に訴えかける映像だ。

もしこの予告動画が、映画作品全体を正確に反映しているのなら、クーパーは伝記映画を製作した名監督の仲間入りを果たすこと間違いないだろう。

しかし、批評する声の中には、クーパーが悪意を持って本作の製作に取り組んだというものまで存在する。予告動画を見る限り、映画『マエストロ』は、レナード・バーンスタインのキャリアと人生を正当に評価し、彼が遺した遺産をより深く理解してもらうため、クーパーが取った行動だ。

この批判は、今後、映画製作者やスタジオが、ユダヤ人を題材とする作品から保守的になり、このような企画を提案すること自体がより困難になる可能性もある。
しかし俳優が自身とは異なる人種を表現するために、その特徴を強く表現することが、批判されることも理解できてしまう。センシティブな問題だ。

非常に注目の作品なだけに、公開前にこのような論争が起こり、作品のイメージが壊れることは非常に残念なことである。

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