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「アイヒマンの心理分析をすることには一切興味がなかった」

© THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP
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――作品の中で、死刑となるアドルフ・アイヒマンについて、その人となりやキャラクターについて全く触れられていません。これは監督が意図したことでしょうか。監督にとってアイヒマンというのはどのような人物だったとお考えでしょうか。また、アイヒマンの顔を一切映さないという演出を採用された狙いについてもお聞かせ願います。

「もちろん、彼の歴史上の役割は理解しているし、ヨーロッパ系ユダヤ人の殺戮において彼が果たした役割というのは十分承知していますが、個人的には、この映画を作るにあたって、彼の心理分析をすることには一切興味がありませんでした。たとえそれが鋭く的確な分析で、彼の本当の人間性を浮き彫りにするものになったとしてもです。

現代の映画作家として、『アイヒマンはこういう人間だったんだ』と描くようなことには、一切興味がなかった。既に素晴らしいフィクションやドキュメンタリーで、アイヒマンに関してはもう十分に語られ、描かれ、掘り下げられています。僕はそうではなく、アイヒマンという存在が、そして彼にまつわるこの映画の中での一連の出来事というものが、周りの人たちにどういう影響を与えたのかに興味がありました。それがこの作品が描いていることです。

司法制度の中で、どのようにしてアイヒマンと向き合うのか、そして、一連の出来事の背後にいた人間が、どんな人たちだったのか。おそらく彼らはそれぞれジレンマを抱えていたと思うんです。そのデリケートな状況に、どう対処していったのかということを描きたかったのです」

(取材・文:寺島武志)

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