白石晃士監督インタビュー

Q：「コワすぎ！」シリーズとしては『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ！FILE-02【暗黒奇譚！蛇女の怪】』から8年ぶりの新作です。なぜ8年かかったんでしょうか？

A：『超コワすぎ！FILE-02』の後、わりと大きい仕事がくるようになったんです。ちょっと「コワすぎ！」をやってる場合じゃなかったといいますか(笑)。」

Q：もともと「コワすぎ！」シリーズは、次の仕事につながる名刺代わりになればと発言されていましたよね。そうですね。だからこそ「伝説のシリーズにしなきゃいけない！ 」と田坂(公章)プロデューサーと話して始めた企画でした。

A：「持てる力をすべて注ぎ込むぐらいの勢いで、未来への投資みたいな感じで作っていけたらと思ってたんです。それがまさに「コワすぎ！」シリーズの影響で『貞子vs伽椰子』とか『不能犯』に監督として呼んでいただけるようになりまして、しかもどれも「コワすぎ！」よりかはお金をもらえるんで。」

Q：プロとしては、そっちをやるのが当然ですよね(笑)。

A：でも、不定期な仕事だし、依頼が来た企画がいつ潰れるかもわからないので、そのうちにどこかでスケジュールが空くだろうと思ってたんです。でも「コワすぎ！」以外の仕事が絶え間なくあって、空きそうだと思ってたタイミングがどんどん潰れてしまったんです。その中でも、ニコニコ生放送の「生でコワすぎ！」は3回やりましたけど。

Q：「コワすぎ！」を「超コワすぎ！」にリニューアルした時も「わりとサクッと終わらせたい」と発言されてましたよね。

A：はい。あと1本か2本ぐらいで終わらせようと思っていて、次に撮るタイミングで最後にするつもりではいたんです。それで「超コワすぎ！」をどう完結させるかを考えていたんですが、それって「コワすぎ！」シリーズ全体としての完結編でもあるわけで、結構ちゃんとやろうと考えていたら行き詰まってしまった。

完結編をやるとなると、登場させないとなって思うキャラクターがまあたくさんいるわけです。「超コワすぎ！」にもいるし、その前の「コワすぎ！」シリーズにもいるし。それぞれに決着をつけるみたいなことも 含めて、バッドエンドかもしれないけど大団円的なラストを考えていたんです。

でも、まずキャスト全員を集められるかがわからない。「コワすぎ！」の場合、まず出演してもらえる人を確保して、それを前提に脚本を書いているので、誰かひとりが「出られません」ってなっただけでめちゃめちゃ困るんです。1本ぐらいのプロットはある程度考えたんですけど……。

Q：その1本ではどんな怪異を扱う予定だったんですか？

A：「かまいたち」です(笑)。名古屋の映画館のシネマスコーレ周辺で、通り魔事件みたいな、切りつけ事件みたいなものが起きるという設定でした。確かに切りつけられているんだけど、犯人の姿は誰も見てない。これはかまいたちなんじゃないかっていう。結局人間型のかまいたちのキャラクターが出てきて、女性の姿をした謎の人物なんですけど。

Q：今回の“赤い女”も刃物を持っていますよね。

A：その女性も“赤い女”を演じた南條琴美さんという愛知県在住の女性に演じてもらおうと思ってたんです。今回南條さんにお声がけしたり、刃物を持っていたりするのは、その影響もあったのかなとは思いますね。で、その後にもうひとつ、パチンコ関係の某会社の人が「コワすぎ！」のすごいファンだということで、「コワすぎ！」のパチスロ台を作りたいという話もありました(笑)。

同時に宣伝を兼ねて新作も作ってください、予算も出します、というお話で。先方の社内で反対があってなくなりましたけど。コロナ禍に入ってからも、延期になったほかの仕事の脚本の直しとかでずっと忙しくて、全然「コワすぎ！」のことは考えられなかったんです。

もちろん、ずっと「コワすぎ！」は終わらせなきゃと思ってはいました。永井豪先生の「凄ノ王伝説」とか少年マガジン版「バイオレンスジャック」みたいな終わり方でいいから終わらせるんだって。で、「ツイン・ ピークス」の新作リミテッドシリーズを最終話まで見てまさに「これ！」って思ったんです。「コワすぎ！」でやるべきは、つまりは投げっぱなしでいいんだと(笑)。

最初にちゃんと完結させようって考えたのが一番の間違いで、「コワすぎ！」は攻め続けるシリーズなので、保守的になったらダメなんです。あと、やっぱりキャラクターがそろわないと完結させられないっていう考えも、ちょっと現実を見ていないなと。