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映画『メメント』はなぜ不朽の名作となったのか? クリストファー・ノーランの最高傑作を徹底考察。主人公の“嘘”の真相とは?

text by 編集部

クリストファー・ノーランの出世作とも言われる映画『メメント』(2000)。時間に逆行するモノクロのシークエンスと時間に順行するカラーのシークエンスを交錯させた物語構成は大きな話題を呼んだ。今回は、米Colliderを参考に本作が「嘘」をテーマとした最高の映画である理由を解説しよう。

10分しか記憶を保てない男が主人公の
クリストファー・ノーランの「原液」

左からジョージャ・フォックス、ジョー・パントリアーノ、クリストファー・ノーラン監督、主演のガイ・ピアース、キャリー=アン・モス
左からジョージャフォックスジョーパントリアーノクリストファーノーラン監督主演のガイピアースキャリー=アンモスGetty Images

『メメント』は、『インセプション』(2010)『インターステラー』(2014)や『TENET テネット』(2020)の「原液」となるような作品だ。

本作の複雑な構造を「ギミック」と呼ぶ人がいる。しかし本作の物語構造は、『TENET テネット』や『インターステラー』などの時間軸の逆行や5次元時空などとは異なるものだ。

なぜなら、『メメント』の時系列は、主人公の記憶障害を表現する最も適した方法だからだ。このユニークな構成を採用することで、物語的な面白さのみならず、アイデンティティの攪乱や記憶の交錯といったテーマの表現が可能になった。この設定こそ、本作をノーランの最高傑作たらしめている。

ここで『メメント』のストーリーを振り返っておこう。ある日、保険会社の調査員として働くレナード(ガイ・ピアース)の家に強盗が侵入し、糖尿病を患っていた妻(ジョージャ・フォックス)が殺害される。彼はその際頭部を殴られ、その後遺症で10分しか記憶を保てない深刻な記憶障害を負うことになる。

レナードは憎き犯人を追跡するが、記憶障害のために捜索は難航。写真を撮り、重要な内容をタトゥーとして自身の身体に刻むことで、自分の記憶を残しながら捜査を続ける。

しかし、物語が進むに連れて、実は強盗事件の犯人と妻を殺害した犯人が別の人物であることが明らかになる。

鍵となるのは、「サミー」と呼ばれる人物だ。レナードの話に頻出するこの人物は、日頃から彼の妻にインスリン注射をしていた。記憶障害を患った夫にノイローゼ気味だった妻は、自分の命を危険に晒せば土壇場で障害が治るかもしれないと考え、許容量を超えるインスリンを打つよう「サミー」にお願いしてみる。しかし、彼女の思いは届かず、結局「サミー」は彼女にインスリンを過剰投与し殺害してしまう。

-もうお気付きだろう。「サミー」とはレナード自身だ。つまり、レナードの妻は他ならぬレナードの手によって殺された。レナードは、犯人ではなく自分自身の「亡霊」を追いかけていたのだ。

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