香港映画への愛と期待を感じる映画祭
『ブルー・ムーン』『風再起時』Q&Aレポート
【『ブルー・ムーン』Q&Aレポート】
11月4日(土)に上映された『ブルー・ムーン』はこの日がワールドプレミア!
しかも冒頭、ゲストで主演グラディス・リーより、日本語で「今日は監督の誕生日です!」と伝えられ、客席からの祝福を受けたアンディ・ロー監督は「大変うれしいです。自分の誕生日に対するプレゼントのような気分です」と照れた笑顔で答え、Q&Aがスタート。
それぞれ秘密を抱える家族の再生を描いた本作のキャスティングについて、グラディス・リーを起用した理由を「この役柄は彼女にとってチャレンジになるとは思っていました。これまでの役と異なり、いやなことがあっても口にしない、内向的な女の子ですが、彼女なら演じられると信じていました」と断言。
対してグラディス・リーは「実際の自分の家庭環境とは違い、母子家庭で育っている役なのでその部分は演じるのが正直難しかった。でも脚本のセリフに助けられました」と答えた。
さらに母親役を演じたロレッタ・リーとの共演を「とてもうれしかった。大先輩ですが、現場では非常に面白くて、ロレッタさんの娘さんが私と同じ年ごろということもあり、本当の母親のように接することができました。」と話した。
また、香港在住の日本人アーティスト波多野裕介さんを起用したことについては、「裕介は今香港にいて、半分香港人のような感じです。前の作品でもご一緒したのですが、今回彼にはエンディング曲をお願いし、その際歌詞は日本語でよいから、と言いました。というのも、今の世の中、映画をみるときに言葉や言語は問題ないと思っています。字幕もありますし、今回はエンディングに日本語の歌を使うことで、全体の雰囲気がよくなったのではと思います」とアンディ・ロー監督。
観客から「日本映画に似た雰囲気を感じた」という声もあり、好きな日本の監督を問われると「山田洋次監督で、小さい頃からみていますが全ての作品が好きです」と即答。
また、この日ワールドプレミアとなる上映を観客とともに一緒に会場で鑑賞していたグラディス・リーは、「香港以外の都市で、香港の笑いがうけいれてもらえるのか、正直心配だったので皆さんの笑い声などを聴きホッとしました。 いつか日本で公開できることを祈ります」と笑顔で話した。
【『風再起時』Q&Aレポート】
11月4日(土)は、会期中2回目となる『風再起時』上映があり、フィリップ・ユン監督、脚本家ソイ・チェンがQ&Aに登壇。
観客から作品タイトルに込めた意味を問われると「中国語題は『風再起時』と時間を表し、英語題は『Where the Wind Blows』と場所を表し、それぞれ意味があります。私たちの暮らしている香港はご存知のように昔から変化し続けています。特にここ10~20年の間に香港は風向きが変わるように、色々なことが起きています。この先10年、どうなっていくのか、を考えたときに1940年代~70年代までどういうことがあったのかを振り返ってみて、この先どこに向かっていくのか、探求をしてみたかった。そういう意味をこめて、このタイトルをつけました」とフィリップ・ユン監督。
さらに「30年にわたる物語のために、監督と脚本チームで、当時の警察の方や黒社会の方にインタビューするなどあらゆるリサーチをした」と脚本のソイ・チェンが振り返る脚本づくりについては、監督いわく「(最終的に文字量が)10数万字くらいあったかな。その中でもその時代を生きた人間の情感、人間の変化に特に注意を払いました。そして役者の演技を通して、その時代を再現(reflection)できたと思っています。」と続けた。
また、初共演のアーロン・クォック×トニー・レオンについてフィリップ・ユン監督は、「アーロンは以前にも仕事をしていて、トニーのことは大ファンでした」と話す。
「この2人が一緒に演技をしたら何か突破したものがみられるのではないか、と思った」と答え、劇中アーロン・クォックが演じたロックの体型変化が気になったという質問には「彼は役柄にあわせ、なぜか自在に太ったり痩せたりできる。彼はとてもプロフェッショナルな役者です」といった裏話も。
滞在中に一緒に食事をしたダヨ・ウォンから「マイケル・ホイはこの作品にでたことで、コメディアンから演技派に変身したね」と言われたことを嬉しそうに話し、「素晴らしい役者さんと仕事をすることができて光栄でした。香港という街に対する理解を深めていただければと願います」と観客へ挨拶した。
最終日の11月5日(日)は、日本初上映のルイス・クー×ラウ・チンワン×アーロン・クォック共演『ホワイト・ストーム 世界の涯て』、そしてレスリー・チャン主演『夢翔る人/色情男女』デジタル・レストア版が上映され、どちらもチケット完売の盛況ぶりで、全日程が終了。
今回2回目となる本映画祭へは「香港映画の新作が観たくて大阪から来た。普段見ることのできない映画が色々見られてとても良かった」という遠方からの来場者や、「最近レスリー・チャンのファンになり香港映画を観るようになった。どれも面白く、もっともっと香港映画が観たくなりました」という声などが寄せられ、香港からの来日ゲストと観客からは、香港映画への愛と、香港映画の未来への期待が存分に感じられる映画祭となった。
「香港映画祭2023 メイキングウェーブ」
2023年11月2日(木)〜5日(日)
「香港映画祭2023 Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」
日程:2023年11月2日(木)~5日(日)
会場:YEBISU GARDEN CINEMA(東京都渋谷区恵比寿4-20-2 恵比寿ガーデンプレイス内)
主催:香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部 香港国際映画祭協会 協力:大阪アジアン映画祭
助成:香港特別行政区政府 創意香港 電影発展基金
公式サイト
公式Twitter:@MakingWaves_HKC
公式Facebook:MakingWavesHKC
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