『ファイト・クラブ』 映像の魅力
撮影監督・ジェフ・クローネンウェスによる映像は、ジェットコースターのような物語展開にふさわしい、目の覚めるようなカメラワークと遊び心のあるディテールがなんとも魅力的だ。
「僕」の住居をぐるっと見渡す映像には、家具の値段や細かい情報がわざわざ字幕で示され、主人公の神経症的なビジョンを上手く表現している。
また「僕」が、がん患者の集いに出席し、瞑想にふけるシーンでは、「(俗世のしがらみから離れ)自分の洞窟へと進みましょう」というセリフをきっかけに、場面は突然雪の洞窟に移行。「パワーを与えてくれる動物に出会えます」というナレーションが流れると、CGのペンギンが登場し、主人公に「SLY!(滑って)」と告げて、以降は二度と登場しない。
このような、物語を語り、理解させる上で必要性の薄い、過剰な映像表現は一見蛇足的ではある。他方で、本作の冗長的な映像表現は、目まぐるしい速度で商品を消費者にちらつかせ、不必要なモノまで買わせようとする大量消費社会のパロディにもなっているのだ。