『ファイト・クラブ』 音楽の魅力
音楽を手掛けるザ・ダスト・ブラザーズは、イギリス出身の音楽プロデューサー・マイケル・シンプソンとジョン・キングによるユニット。ベックやオアシスといったビッグアーティストとのコラボレーションで知られ、電子音楽とロックを融合させたスタイルで人気を博している。
暴力に満ちあふれ、狂騒的な雰囲気と退廃的なオーラが奇妙に共存した本作の作品風土と、ザ・ダスト・ブラザーズによる高周波数の不穏な電子音は相性抜群だ。
主人公・「僕」のナレーションは、無機質なテクノミュージックと合わさることで、物語の筋を説明するという役割を超えて、「スポークン・ワード」のような様相を帯びる。
スポークン・ワードとは、音楽に合わせて詩を朗読する、ヒップホップと朗読劇を混ぜ合わせたような表現のこと。《配役》の項目でも述べたとおり、本作には後世に残る名セリフが多く、見どころの一つとなっているが、そこには言葉の強度を高める、音楽の力が深く寄与しているのだ。
一方、エンディングテーマのみザ・ダスト・ブラザーズのスコアではなく、ロックバンド・ピクシーズによる、力強いギターサウンドを基調とした楽曲が使用されており、「僕」とマーラが抱き合う背景でビルが崩壊していくラストカットに奇妙な爽快感をもたらしている。
ちなみに、本作のサウンドトラックには、ピクシーズによるエンディング曲は収録されていないのでご注意を。
《使用されている楽曲》
ピクシーズ『ホエア・イズ・マイ・マインド』