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75mmレンズを駆使したこだわりの撮影~映像の魅力~

横長のシネマスコープサイズを活かしたダイナミックな映像を手がけたのは、撮影監督のウォーリー・フィスター。ノーランとは名コンビで知られ、『メメント』から『ダークナイト ライジング』(2012)までの7本の作品でカメラを担当している。

『メメント』の撮影を担当したウォリー・フィスター
メメントの撮影を担当したウォリーフィスターGetty Images

製作費は900万ドル。ハリウッド映画としては破格の低予算ではあるが、ノーランの並々ならぬ映像へのこだわりが随所で光る。ちなみに、ノーランの長編7作目『インセプション』(2010)の製作費は、およそ16億ドル。本作がいかに低予算で制作されたのかがうかがい知れるだろう。

全編にわたって、人物の輪郭をシャープに映すと同時に、風景のニュアンスも豊かに伝える75mmレンズが使用されている。フォーカスが合っている面をクリアに浮かび上がらせ、境目を感じさせずになだらかにボケていく映像の質感は、主人公・レナードの主観が世界全体に浸透していく様子を、そこはかとなく表現している

レナードがジミーを絞殺する場面や、テディを撃ち殺すシーンなど、物語のターニングポイントで暴力的な事件が勃発する。テディを銃殺する過程を逆再生してみせる冒頭の場面では、投げ捨てた拳銃がレナードの手元に戻り、床に転がった弾丸が銃口に収まる。『TENET/テネット』やミヒャエル・ハネケ『ファニーゲーム』(1997)のクライマックスと並ぶ、映画史に残る逆再生シーンだと言っていいだろう。

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