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登場人物の内面を表現したキャッチーな演出ー映像の魅力

ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ジョセフゴードン=レヴィットGetty Images

本作には、ミュージックビデオ出身のウェブらしく、センスが光る凝った演出があちこちに散りばらめられている。

例えば34日目、サマーと肉体関係を結んだトムがウキウキした様子で街に繰り出すシーンでは、車の窓ガラスに映ったトムの顔が『スターウォーズ』シリーズのハン・ソロになっている。

さらに公園に繰り出したトムは、道行く人と握手やハグを交わし、一緒に踊り出す。そして、最後には、トムの肩にアニメーション調の青い鳥がとまる。

また、314日目では、傷心のトムが映画館で1人見ているモノクロ映画の中にトム自身が登場し、サマーへの悔悛の想いを口にしたり、罵倒されたりする。

何をやっていても恋人のことを考えてしまうという、失恋期の感情を示した巧みな演出だ。

そして、極め付けは、402日目だろう。サマーと再会し、パーティーに誘われたトムは、期待に胸を膨らませてパーティーへ足を運ぶ。

ここから、画面がいきなりスプリットスクリーン(2画面)になり、左側の画面には「EXPECTATION(期待)」右側の画面には「REALITY(現実)」の文字が表示される。

両画面に写っている光景はほとんど同じだが、左側の画面のトムがサマーにうまく接近し、最終的にキスにまで持ち込んでいるのに対し、右側の画面のトムは友人と会話するサマーを遠巻きに眺めているだけだ。

そして、彼は、サマーの手に婚約指輪が輝いているのを見つけ、そのままパーティー会場を後にする。

ビル街に佇むトムが背後からロングショットで捉えられると、画面全体がアニメーション調になり、その後、周りの背景が消しゴムで消され、くすんだ地だけが残る。

このあたりの映像表現は、傷心のトムの主観をわかりやすく表現した巧い演出だといえるだろう。

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