「どの撮影でもこれが最後の映画だと思って取り組んでいます」
―――2013年、ジェイク・ギレンホールとヒュー・ジャックマンの『プリズナーズ』でアメリカデビューを果たしましたが、当初はハリウッドに対して消極的だったようです。どうしてでしょうか?
「外国人監督にとって、ハリウッドは恐ろしいものです。偉大な映画作家がその体制に押しつぶされ、アイデンティティを失うという話はよく耳にします。ハリウッドは大きな機械のようなものであり、私は危うさを感じていました。
私が映画『灼熱の魂』(2010)で成し遂げたことの中には貴重で純粋なものが含まれていました。それと同じような芸術的誠実さを持ちながら次の映画を制作することで、自分自身を守りたかったのです。
しかし、当時のエージェントから送られてきた最初の(アメリカの)脚本のひとつが、不思議なことに『灼熱の魂』やテーマである暴力の連鎖と直接的な連続性を感じました。それが『プリズナーズ』で、私はスタジオと会うことに同意し『ついにあの悪名高いハリウッドのスタジオ幹部に会うんだ』と自分に言い聞かせました。
失うものは何もなかったので、恐れずにロスに自分を売り込みに行きました。だから私は彼らを喜ばせようとはせず、ただ真実を話しました。その率直さが採用されたのかもしれません。
『プリズナーズ』がこんなにうまくいくなんて信じられませんでした。私はとても尊敬され、ディレクターズカット版まで作られました」
―――2016年の映画『メッセージ』で初めてSFジャンルに進出して以来、ずっとSFの世界に留まっています。当時、もっとSF的な物語を世に伝えてたい思っていたことで、当時は相当のプレッシャーを抱えていたのではないですか?
「私はいつもどの撮影でもこれが最後の映画だと思って取り組んでいますが…その通りです。SFをやるために特別な物語を探していて、テッド・チャンの素晴らしい短編小説『あなたの人生の物語』を読んだ時に、まさに『これだ!』と思ったのです。
言語と現実の認識についてや、文化が現実に与える影響についての探求は、私を感動させる何かがありました。だからその時、私は何か特別なものを手にしていると思ったし、意味のあるSFに取り組むには完璧なプロジェクトだと考えていました」