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巨匠マルコ・ベロッキオがカトリック教会の犯罪に挑む。『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』監督インタビュー解禁

text by 編集部

スピルバーグが映像化を断念した「エドガルド・モルターラ誘拐事件」に迫った衝撃作。映画『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』が、4月26日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテほか全国公開される。この度、同作の監督・脚本を務めた巨匠マルコ・ベロッキオのインタビューが解禁された。

イタリア映画界最後の巨匠マルコ・ベロッキオ
最新作に寄せたインタビュー解禁

© IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)
© IBC MOVIE KAVAC FILM AD VITAM PRODUCTION MATCH FACTORY PRODUCTIONS 2023

84歳のマルコ・ベロッキオが、圧倒的な衝撃作と共に映画界に舞い戻ってきた。教会によるユダヤ人少年誘拐事件という前代未聞の史実「エドガルド・モルターラ誘拐事件」を題材とした新作に寄せたインタビューが解禁となる。

青年期エドガルドを演じたイタリア最旬俳優レオナルド・マルテーゼ(『蟻の王』)が「今まで出会った中で、最も知的でスマートな人だ」と仰ぎ見る、まさにイタリア映画界最後の巨匠が、最新作で描いたものとは。

―なぜ、「エドガルド・モルターラ誘拐事件」を映画化したいと思ったのでしょうか。

© IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)
© IBC MOVIE KAVAC FILM AD VITAM PRODUCTION MATCH FACTORY PRODUCTIONS 2023

「実際に起きたこの史実に、強く惹かれるものがありました。何より、当時のカトリック教会という絶対権力による、”由来は知れずとも、洗礼を受けた子どもはカトリック教徒なのだ”という絶対原理の名のもとに行われた誘拐事件—即ち犯罪について描くことができるのですから。心から、誠実に描きたいと思った題材の一つでした」

―主人公エドガルドは「洗礼を受けた」という情報だけで誘拐され、親元から離れキリスト教の教育を受ける生活を余儀なくされます。今では考えられないことです。

© IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)
© IBC MOVIE KAVAC FILM AD VITAM PRODUCTION MATCH FACTORY PRODUCTIONS 2023

「エドガルド・モルターラの誘拐は、権威を重んじる平和な上中流家庭に対する犯罪でもありました。

エドガルドが当時暮らしていたボローニャにおいては、国王としての教皇の権威が尊重されていましたが、だんだんとリベラルな原理が至る所で肯定されていき、すべてが変化しつつありました。

権威の崩壊を食い止めようと、教会側は強硬的な姿勢を崩さず、エドガルドの返還に応じようとしませんでした」

―少年期エドガルドを演じたエネア・サラから、青年期エドガルドのレオナルド・マルテーゼの違和感のない移行に驚きました。特にエネア・サラの演技には涙を禁じ得ませんでした。

© IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)
© IBC MOVIE KAVAC FILM AD VITAM PRODUCTION MATCH FACTORY PRODUCTIONS 2023

「2人ともオーディションで選ばれた俳優です。特に少年期エドガルドを演じるエネア・サラは、これまで演技の経験もなく、教会に足を踏み入れたこともなかった7歳の男児でしたが、エドガルドの境遇に心から寄り添い、その複雑な内面や葛藤を自分のものにしていました。

その点においては、両親を含めた周囲のキャストが真のプロフェッショナルであったこともプラスに作用したと思います」

―「エドガルド・モルターラ誘拐事件」は当時世界中で議論を巻き起こし、イタリア統一運動にも大きな影響を与えたという説もあります。

「大きな歴史の中にある、ある一個人の運命を描いた映画です。当時の絶対権力によって、人生を予期せぬものにされた人物が主人公ですが、自分たちの周りには存在せず、想像すらできなくとも、そのような人生を現実に歩んだ人がいるということに思いを馳せるきっかけにもなるでしょう。

また、イタリア統一後、ローマが解放されてからのエドガルド自身の選択についても、興味深いものと言えると思います。この映画をご覧になった方がどのような感想を持つのか―。気に入ってもらえることを心から望んでいます」

【ストーリー】

1858年、ボローニャのユダヤ人街で、教皇から派遣された兵士たちがモルターラ家に押し入る。枢機卿の命令で、何者かに洗礼を受けたとされる7歳になる息子エドガルドを連れ去りに来たのだ。取り乱したエドガルドの両親は、息子を取り戻すためにあらゆる手を尽くす。

世論と国際的なユダヤ人社会に支えられ、モルターラ夫妻の闘いは急速に政治的な局面を迎える。しかし、教会とローマ教皇は、ますます揺らぎつつある権力を強化するために、エドガルドの返還に決して応じようとしなかった…。

【作品情報】

監督:マルコ・ベロッキオ
脚本:マルコ・ベロッキオ、スザンナ・ニッキャレッリ
製作:ベッペ・カスケット『シチリアーノ 裏切りの美学』、パオロ・デル・ブロッコ『ドッグマン』
出演:パオロ・ピエロボン、ファウスト・ルッソ・アレジ『シチリアーノ 裏切りの美学』、バルバラ・ロンキ『甘き人生』、エネア・サラ、レオナルド・マルテーゼ『蟻の王』
2023/イタリア、フランス、ドイツ/カラー/イタリア語/134分
配給:ファインフィルムズ
原題:Rapito 映倫:G
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
© IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)

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