「時間逆行」の意味とは? 未来人の目的は? 史上屈指の難解映画『TENET テネット』をわかりやすく解説
映画『テネット』イラスト:naomi.k
TENET テネット
- 原題:
- Tenet
- 製作年:
- 2020年(アメリカ合衆国)
- 監督:
- クリストファー・ノーラン
- 脚本:
- クリストファー・ノーラン
- 撮影:
- ホイテ・ヴァン・ホイテマ
- 音楽:
- ルドウィグ・ゴランソン
- 配給:
- ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
- 上映時間:
- 151分
クリストファー・ノーラン監督による大ヒット作『TENET』は度を超えたストーリーの難解さを誇り、置いてけぼりをくらう観客が続出した。今回は、そんな難解映画を徹底考察。過去に「逆行」することで、世界を救おうとする主人公の軌跡を整理し、ストーリーを理解する上で重要なポイントをわかりやすく解説する。 あらすじ レビュー 評価
(文・ZAKKY)
【『TENET テネット』あらすじ】
時は近未来。ウクライナのオペラハウスでテロ事件が発生し、CIA諜報員の主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、敵の標的であるCIAのスパイを救うために奮闘するが、捕まってしまう。
百戦錬磨のロシア兵から拷問を受けた主人公は、命と引き換えに組織の秘密を守るため、毒薬を口にする。しかしそれは毒ではなく、睡眠薬であった。
目を覚ますと、ウクライナでの出来事がすべて、彼を試すための訓練だったと知らされる。テストに合格した主人公は、「テネット」という名の組織に加わり、第3次世界大戦を阻止すべく、活動することに。
政府の研究室に招待された主人公は、体を貫いた弾丸が銃身に逆戻りする、超自然的な光景を目の当たりにする。「逆行する弾丸」は過去を変える力を持つとされ、未来人によってもたらされたものだった。主人公は弾丸の秘密を明らかにすべく、製造元であるインドの都市・ムンバイに飛ぶのだが…。
そもそもなぜ難解なのか?
未来と現在が交錯する二重構造を理解しよう
あらすじだけ読めば「現代人vs未来人の戦争」を描いた、わかりやすいタイムスリップものと思われがちだが、そうはいかないのがこの作品である。
そもそも未来人自体が出てくるわけではない。未来人が生きる地球は、破滅寸前である。彼らは、時間を「逆行」(この物語のキーワードである)する技術を駆使し、過去の地球に逃げようとしている。さらに、地球環境を正常にするという名目で、現代人である今作の悪役・セイター(ケネス・ブラナー)を利用して、現代人と戦争を起こそうとしているのだ。
このように、未来と現在が複雑に交錯する二重構造的なストーリーであることを、まず前提として理解しておきたい。そして、時間の流れを変えるために必要な装置が、未来の科学者が発明した9つの部品で構成される「アルゴリズム」である。
アルゴリズムが起動してしまうと、過去の時間の流れが変わってしまうため、過去の人類は呼吸が出来なくなり、死滅してしまう。過去の人類が滅亡すると、その子孫である自分たちも滅亡してしまう。そう考えた、「アルゴリズム」の開発者は、絶望し自殺。さらに、「アルゴリズム」を悪用されないように分解した上で、時間の逆行を使い、過去の世界に封印した。
その分解された部品の一つが、今作のキーアイテムとなる「プルトニウム241」である。しかし、未来人たちは過去の人類が死滅しても、自分たちは生き残るかもしれないという可能性に賭けることにした。そして、セイターを操り、過去の世界に封印されたアルゴリズムを起動しようと目論むのであった。
『TENET テネット』の物語をわかりやすくかみ砕いて解説した。次ページからは本作を難解にしているファクターの一つである「逆行」について見ていこう。