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物語を理解するために
まずは主人公視点の時間軸を追う!

「逆行」のルールを理解した上で、ストーリーの深部に入っていこう。まずは「逆行」をする主要キャラクターを把握しておきたい。

・主人公:演じるのはジョン・デヴィッド・ワシントン。キャラクターに名前はなく、特殊部隊員の男としか形容できない。

・セイター:演じるのはケネス・ブラナー。今作の悪役。最終決戦地「スタルスク12」が生まれ故郷であり、子供のころの経験が、物語の大きな鍵となっている。

・キャット:演じるのはエリザベス・デビッキ。今作のヒロイン。セイターの妻であるが、彼を憎んでおり、殺害を企てる。

・ニール:演じるのはロバート・パティンソン。主人公の相棒となる男。

上記のキャラクターの役割を踏まえた上で、ここでは焦点を主人公の行動に絞り、「逆行」の世界線、そして本来の通常に流れている時間軸を「順行」と呼ぶことにし、物語の流れを紐解いていきたい。

まずは、主人公が関与した大きな事件と場所を整理しよう。

1 キエフ/オペラハウスにて、爆破テロ

2 オスロ空港にて飛行機衝突

3 テナンのハイウェイにて、カーチェイス

4 逆行し、①の時間軸に戻り、「スタルスク12」の決戦

※1~4の間にも、逆行・順行は行われている

主人公視点の行動をさらにくわしく見ていく。

① 爆破テロが起こるオペラハウスでCIAの任務を遂行するが、敵に捕まる。

② 拷問を受け、自殺を図るが、何者かに救出される。

③「逆行銃」の製造元を追ってムンバイへと向かう。ニールと仲間になる。

④ ロンドンで、セイターの妻であるキャットと近づくための重要アイテム「ゴヤの贋作」を受け取る。

⑤ キャットと面会し、彼女の弱みであるセイターが持つもう一つの贋作の話をする。

⑥ アマルフィでキャットと再会し、贋作を破棄したと虚言。セイターに会い、「プルトニウム241」の強奪作戦を持ちかける。

⑦ テナン警察から「プルトニウム241」を強奪したものの、逆行してきたセイターがキャットを人質に取ったため、カーチェイスの最中、「プルトニウム241」の空箱をセイターに渡し、中身を見知らぬ車の中に投げ入れる。その車は、後にクラッシュ事故を起こす。

⑧ セイターにキャット共々捕らえられ、嘘の「プルトニウム241」の在り処を教える。

⑨ その後、キャットが「逆行弾」で撃たれるところを目撃する。

<逆行開始>

⑩ 逆行し、危篤状態のキャットを救うため、キャットを逆行させ、治療することを計画する。

⑪ 「プルトニウム241」の回収と、その先の未来で起きたキャット銃撃を防ぐため、車でセイターを追う。

⑫ しかし、順行の時間軸で「プルトニウム241」を投げ込んだ車に乗っていたのは自分だと気付き、順行の時間軸の車はクラッシュ事故を起こす。

⑬ 目を覚ますと救出されており、キャット、ニールと共にコンテナの中にいた。

⑭ 深手を負ったキャットを治療するため、オスロの飛行機衝突の時までさらに逆行し、そこで再度順行に戻ることを計画する。

⑮ 腕に、覚えのない傷があることに気付く。

⑯ 逆行し、飛行機激突騒動のどさくさに紛れて、「回転ドア」で順行に戻る。

⑰ その際、過去の「順行」している自分と戦闘になり、腕に傷を負う。15で描写された謎の傷跡は、この時に負ったものだった。

<順行開始>
⑱ 完全に揃った「アルゴリズム」がどこにありセイターがいつ、どこで起動するかを予想する。

⑲ キャットの情報により、ベトナム湾で起動すると推測。同時にアルゴリズムがある場所を、オペラハウス爆破テロと同タイミングで爆発事故が起きていた「スタルスク12」にあると特定する。

<逆行開始>
⑳「スタルスク12」で爆発があった10分前まで逆行し、アルゴリズムの奪還を目指す。

<順行開始>
㉑ 順行に戻り、爆破10分前の戦場へ。ミッション強力関係者であるアイヴスと地下にあるアルゴリズムの奪還へと向かう…。

…これ以降の展開は、是非、映画そのものをお楽しみいただきたい。

先に述べたように、主人公の時間軸を追うだけでも難解であるのに加え、他のキャラクターたちも変則的な時間軸で存在しているため、容易に理解できないストーリーとなっている。

『メメント』(2000)以来、時間表現にまつわる実験を繰り返してきたクリストファー・ノーラン監督からの、観客への挑戦とも言える作品である。

「何回観ても新しい発見がある」という言葉は、優れた映画を賞賛する際によく使われるものだ。それにならって言うならば、『TENET テネット』は「何回も観るべき映画」、あるいは「何回も観なければ魅力がわからない映画」である。ぜひ本稿を手引きにして、パズルを解くような感覚で、繰り返し鑑賞してみてはいかがだろうか。

(文:ZAKKY)

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