ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » 映画『バティモン5 望まれざる者』公開記念! パリ生まれの眼帯ラッパー・ダースレイダー&高校生のトークセッション開催 » Page 2

民主主義における法律や秩序とは何なのか?
ダースレイダーと高校生が白熱議論!

© SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023
© SRAB FILMS LYLY FILMS FRANCE 2 CINÉMA PANACHE PRODUCTIONS LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE 2023

ここでダースレイダーさんはさらに「法律や秩序とは何なのか? 誰にとってのものなのか? 民主主義の社会で法や秩序はどうやって決まるのか?」と生徒たちに問いかける。

生徒たちからは、民主主義における物事の決定方法として「多数決」という声が上がるが、ダースレイダーさんは「民主主義では、100人の人がいたら、ひとりひとりが同じ権利を持っている。多数決はあくまでも、便宜上のものに過ぎない」と、必ずしも多数決が絶対ではないと語り、さらに「そもそも、移民たちは(決定のプロセスに関わる)100の中に含まれていないという解釈もあると思います」と生徒たちに新たな視点を提示する。

ここから、さらに議論は白熱!

生徒たちからは映画の中の住人たちの行動や、行政側の採った方法について「暴力で解決しようとしたり、自分たちのことばかり考えるのではなく、少数派やお互いのことをよく見て、妥協点や納得できるポイントを見つけられないのか?」「統治側と移民側でコミュニティの(習慣や文化の)違いが大きい。違う属性の人と接したり、優しさをもって(コミュニティの)壁を破っていくことが大事」「不満を伝える手段がないから暴力に訴えてしまう。暴力以外の(不満を伝える)方法が認められれば、(暴力沙汰は)起きないんじゃないか?」歩み寄りや解決に向けた方法を模索する様々な意見が飛び出す。

また、ダースレイダーさんは、行政側の強硬な行動の根拠となっている、許可のない食堂の運営や定員オーバーの居住実態など、住民側の違法行為についても「法や秩序そのものを変えることはできないのか?」と新たな視点を投げかけ、「様々な意見や利害を調整するのが政治家の仕事であり、民主主義社会では、政治家もまた同じ権利を持つ人々から選ばれている。自分たちの暮らす社会をどう運営していくのか、自分たちで話し合って決めようということ」と語り、民主主義においては、法律の運用そのものを変えていくことも可能であり、法律や秩序は、人々が幸せに暮らしていくために存在するものであると説く。

このほか、生徒や保護者からは「団地で暮らす人たちは『自分たちはフランス人』というアイデンティティを持っているけど、統治側は“移民”とひとくくりにしている。新たにやってきたシリア人の移民と、以前からいる(アフリカ系の)移民との間で、分断や軋轢が生まれて来ている」、「2世、3世はフランスで生まれて、フランス語を母語に育っているのに『国に帰れ』と言われるし、これまで相当なローンなども払っているはずなのに立ち退きを迫られる――暴力沙汰になる前の段階があったはずで、そう簡単に“排除”してはいけないし、法や秩序で簡単に片づけられない部分がある」など住民側に寄り添う意見も聞かれた。

ダースレイダーさんは特別講義の最後に生徒たちに「あの集合住宅のひとたちは不幸だと思いますか?」と問いかける。映画では、住人のひとりが亡くなった際に、人々が協力して棺を外に運び、遺族を慰める姿が描かれる一方で、為政者たちが登場するシーンでは照明が暗くなっており、こうした対照的な描写を踏まえつつ、ダースレイダーさんは「人間が国や街という形で社会を形成し、一緒になって暮らすのはなぜか? 根本的には毎日、みんなが楽しく幸せに生きられるようにという理由だったはず。経済的には過酷なはずのバティモン5の人々はみんな生き生きしている――ここにもヒントはあるんじゃないかと思います」と語る。

そして「みなさん、ぜひ今日の映画や今日の話をテーマにいろいろ話し合ってほしいです。民主社会がどう成り立っているかというと、何かを力で決めるのでもなく、王様が決めるのでもなく、話し合いが必要なんです。大変でもめんどくさくても、話し合っていくしかない――この映画を通じて、そこに辿り着ければと思います」と改めて話し合いの重要性を呼びかけた。

『バティモン5 望まれざる者』は5月24日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

【作品情報】

監督・脚本:ラジ・リ『レ・ミゼラブル』
出演:アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ、アリストート・ルインドゥラ、スティーヴ・ティアンチュー、オレリア・プティ、ジャンヌ・バリバール
2023年/フランス・ベルギー/シネマスコープ/105分/カラー/仏語・英語・亜語/5.1ch
原題:BÂTIMENT 5/字幕翻訳:宮坂愛/映倫区分G
配給:STAR CHANNEL MOVIES/後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
© SRAB FILMS – LYLY FILMS – FRANCE 2 CINÉMA – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023
公式HP:block5-movie.com

【関連記事】
世紀の大爆死…最悪のヒーロー映画は? 迷走した失敗作5選【洋画編】ファンも見放した期待外れ作をセレクト
最も偉大なアニメ映画は? 日本が世界に誇る傑作アニメ5選。新海誠やジブリだけじゃない。邦画界屈指の天才アニメーターが集結
海外で絶賛された日本のドラマは…? 世界進出に成功した稀有な名作5選。まさに快挙…グローバルで愛される作品をセレクト

1 2
error: Content is protected !!