「プリンスは僕の人生を変えた人」映画『プリンス ビューティフル・ストレンジ』ダニエル・ドール監督、単独インタビュー
稀代の天才ミュージシャン、“プリンス”の真実に迫るドキュメンタリー『プリンス ビューティフル・ストレンジ』が新宿シネマカリテほか全国ロードショー中だ。今回は、メガホンをとったダニエル・ドール監督にインタビューを敢行。作品に込めた思いをたっぷり語ってもらった。(取材・文:山田剛志)
なぜ人々はプリンスの表現に魅了されるのか?
―――個人的にプリンスはとても好きなアーティストです。特に80年代に発表したアルバム『1999』、『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』、『サイン・オブ・ザ・タイムズ』の3枚は、今でもよく聴くアルバムです。
「そうですか! あなたのように若い世代の方から、プリンスの音楽が心に刺さっているというお話を聞くたびに、プリンスの影響力に圧倒されます」
――――今回の映画は、アーティストとしてではなく、人間としてのプリンスにフォーカスが当てられていて、初めて知る情報も多く、とても面白く拝見いたしました。 ドール監督とプリンスとの出会いから伺えればと思います。
「私とプリンスは年齢が一歳差で、同世代ではあるのですが、実は、アーティストとして親しんできたわけではなかったんです。もちろん偉大なアーティストであると認識はしていて、何度か音楽を聴こうと試みたのですが、どうしても親しみがもてませんでした。当時は、自己中心的で奇妙な人、というパブリックイメージをそのまま受け取っていて、彼のことを全然知りませんでした。しかし本作を制作したことで、今では僕の人生を変えた歴史上で最も素晴らしいアーティストの1人だと思っています」
―――映画づくりを通して、プリンスに対する認識がガラッと変わったのですね。
「楽曲の歌詞や演奏が素晴らしいのはもちろん、プリンスほど、ファンや同業者を含めた人々との繋がりを大事にしたアーティストはいないのではないかと思っています。彼は“Love&Unity”(愛と一体感)というメッセージを強く打ち出しているアーティスト。人種に関しても、ブラック、ホワイト、ピンク、パープル…どんな色でも共存できるというメッセージを、ずっと昔から発し続けていた偉大な人でもあります」
―――人種や性別はもちろん、プリンスの表現には世代間の壁を貫通する力があります。
「プリンスを讃えるパーティーに足を運ぶと、10代から80歳まで幅広い世代の人たちが集まっていて、驚かされます。何でみんなこれほど彼に惹かれるのだろうって考えた時に、音楽性ももちろんですけれども、楽曲を通して、彼の人間性がとてもよく見えるからではないかと思っています。
一方で、彼は神でもなく、完璧な人間ではありませんでした。彼の未熟な部分、100%でないところが、音楽を通して赤裸々に共有されていて、みんなのエネルギーの源になっているんじゃないかなと思っています。
彼から学ぶことでファンの人たちも人間的に良い方向に変えられたんじゃないかと思っていて。僕自身もプリンスを知ることによって、すごく良い人間になれたような気がしています」