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オリジナルタイトルに
“プリンス”という言葉を使わなかったワケ

©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.
©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC

―――人間・プリンスを描くというコンセプトに関係すると思いますが、原題が『Mr.Nelson On The North Side』となっていて、プリンスという名称をあえて使われていません。タイトルに込めた意図を伺えますでしょうか。

「プリンスは最初、ネルソンという名でデビューしようとしていて、レーベルや周囲の友人たちが『プリンスの方が絶対いいよ』と説得したというのです。加えて、プリンスは幼少期から、自分のことを『ミスター・ネルソンと呼んでくれ』と、ことあるごとに言っていたというエピソードも残されている。これは彼の中でミュージシャンであった父親(ジョン・ネルソン)の存在がいかに大きかったのか、雄弁に物語っていると個人的には思っています。今回のタイトルにはその辺の意味合いも込められています。

また、北部で生まれ育ったという点も、プリンスの生涯を考える上ですごく重要なポイントです。アメリカでは北部と南部とでは文化が大きく異なります。今回の映画では、ノースサイドの人としての側面に光を当てているところがあり、タイトルに入れました」

―――プリンスといえば、メディアへの露出に積極的ではなく、ミステリアスな印象が付きまとっていますが、本作はデビュー前からプリンスと親交のある方から、チャカ・チャーンやパブリック・エナミーのチャックDといったアーティスト仲間、さらには熱心なファンの人々に至るまで、多岐に渡る人物の言葉によって構成されています。取材対象者はどのような方針で選ばれましたか?

「本当はもっと沢山の人にインタビューをしたのですが、全部使うとなると、尺が10時間くらいになってしまうため、泣く泣く刈り込んだのです。その中でも、チャカ・カーンのインタビューは必ず入れたいと思っていました。アーティスト仲間の中では、彼女はプリンスのことをおそらく最もよく知っている人物で、プリンスも彼女のことを姉のように慕っていました。

あとは、ZZトップのフロントマンであるビリー・ギボンズに話を聞けたことも大きかった。プリンスは、誰もが認めるギターの達人であるギボンズをもってしても、『超えることはできない』と言わしめる存在です。ギボンズの話を入れることで、プリンスのアーティストとしての偉大さを改めて浮き彫りにできたと思っています」

―――今お話に出た方以外のミュージシャンにも取材をされたのでしょうか?

「はい。しかしながら、取材をさせてもらったミュージシャンの中には、プリンスの人柄、彼との交流について語るのではなく、偉大なアーティストであるプリンスと自分がいかに仲が良かったかとか、自慢話に終始する人もいて。そのような人たちよりも、プリンスのことを真摯に話してくれる人――プリンスの最初の音楽教師だった男性とか、幼馴染だった人―― のお話を多く使いました」

―――今回の映画では、プリンスがステージで躍動する映像はほとんど使われておらず、写真とアニメーションを駆使して彼の様々な側面に光を当てています。こうした構成をとられたのはなぜでしょうか?

「ストーリーを再現するのに、映像ではなく、画で表現したいと思ったのです。一方、画で表現するのにはリスクも伴います。というのも、皆さんの頭の中にはそれぞれのプリンス像があるので、それを超えるような画でないと、観る人は納得しないからです。それが懸念だったのですが、幸いなことに、南アメリカで活動している水彩画アーティストの方とご縁ができて、彼が素晴らしい画を作ってくれました」

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