「私にしか出せないものって何だろう」
本作が結婚後初の出演作
ーーー共演者たちのイメージはいかがでしたか?
「主役のショーンを演じたクイン・ロードさんを始めとして、とにかくハリウッド俳優のオーラを、ものすごく感じましたね。また、撮影スタイルが日本とは全然違って『これがハリウッドスタイルなのかな』と」
ーーーどのような場面でそう感じたのでしょう?
「日本では、キャラクターがこういうものだろうなって、ある程度役作りをしていくのが普通です。現場に入って、テストのときに監督の前で思い描いていたものを見せて、そこからさらに立て直していきます。
ハリウッド俳優も基本的には同じですが、レイコの夫役のビリー・ゼインは、自身の役のキャラクターを30パターンくらい考えてきていたんですよ。
監督にも、『演じたすべてのテイクを撮ってくれ』って言っていて。で、監督がこのパターンが良いって言っても、『まだあるから! 』と、絶妙に違うものが永遠に出てくるんですよ(笑)。監督も『もう撮れているのになあ~』と言いながらも、ずっと撮っていました」
ーーー役に対して多方面からアプローチしてきたものをテストで見せて作り上げていくんですね! 楽しんで演じるということにも繋がりそうです。
「他にも、ワンシーンを1日かけて撮ったり、俳優の引き出しの多さも然ることながら、撮影自体に時間をかけられるんです」
ーーーその空気感には相当感化されたのではないでしょうか?
「ええ。だから、私もビリーがおちゃらけた感じの演技をしてきたら、それに応じた対応をするなど、自然と考えるようになりました。結局、これは俳優同士の科学反応だと思うので、ビリーの奥さん役として、本当の夫婦に見えるような気持で演じました」
ーーー興味深いです。
「私に興味を持っていただいて得た役なので、私にしか出せないものって何だろうということは常に考えていました。自分が与えられた使命ってなんだってことを考えた時に、自分の持ち味を客観的に分析をしました」
ーーー例えば、どのような分析をされましたか?
「レイコは子供がいるわけではないのですが、結婚はしています。私が結婚後に、初めて出演した映画なので、そこは新たな既婚者としての私の持ち味を出せるかなと考えました。
撮影時、私の子供はまだ小さく、結婚後すぐに妊娠して、その後しばらく子育てに専念したかったので、俳優業を休業していました。その間は、もう役をいただけないんじゃないかという不安感があったのですが、そのうち、『別に私の代わりはいっぱいいるから』と、割りきれたんです。
そうやって吹っ切れていたときに、いただいた役でしたので、そこにも縁を感じました。『ああ、私のことを求めてくれている人がいたんだ』って」
ーーー釈さん自身の人生の流れでの中でも、ドンピシャにリンクしていたんですね。本作はいわゆる“特撮モノ”ですが、他のジャンルとの芝居に違いはありますか?
「結構違うと思います。他の作品ですと、どちらかと言うとナチュラルな演技が求められます。表情ひとつ取っても、そこまで大げさにせず、心の中で感じたものを表情に出せるような、言ってみれば引き算的な感覚ですね。でも特撮モノは、演技の中であえてリアクションを立てないと、『特撮』というジャンルそのものに負けてしまうんですよ。それを、『ゴジラ×メカゴジラ』で演じた際に学びました。
あと、特撮あるあるなんですが、グリーンバックを背景にして何もないところに向かって叫んだり、話したりする演技をするわけですよ。そう考えると、特撮は足し算なのかと。だから、大げさな演技をしないと伝わらないんです」