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森から逃げる唯一の方法

©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
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 他方、マデリンからの勧告にそむいてウォッチャーズが昼間潜んでいる森の中の穴に入ったことで、ミナらは怪物たちの怒りを買ってしまう。その夜、鳥かごのガラスにはヒビが入れられるが、マデリンが身を挺して他の三人を庇い最悪の事態は避けられる。翌朝、彼女はミナらにあらためて規則を守るよう厳命し、ミナの側にもマデリンへの一定の信頼が生まれる。

 だが、むしろ一度は破った規則を必死で守ろうとしたことが、新たな突破口へとつながる。ガラスが割れ、鳥かごの安全が危ぶまれる危機的状況に至って、ウォッチャーズから扉を守ろうと家具を動かしたことで、偶然にも彼らが暮らしてきた部屋の地下にもう一つの空間があることが発覚する。

 その後、地下のコンピューターに残された鳥かごの建造者キルマーティン教授の動画ファイルによって、怪物たちの正体と、森から逃げる唯一の方法が伝えられる。

 翌朝、破壊された鳥かごを後にして森を出るために出発した一行は、鳥たちを道標に歩みを進めていく。どこからやって来るかわからない恐ろしい視線に常に監視される一方で、窮屈な規則と引き換えに真の恐怖からミナを守ってくれる空間でもあった「鳥かご」が壊れたことで、彼女は危険を顧みず自らの足で歩き出すことを強いられる。

 あたかもそんな状況を反映するかのように「鳥かご」から放たれたオウムのダーウィンが、今度はミナらを脱出へと導く。ここでは、ウォッチャーズ、人間、リアリティ番組の登場人物たちが作り出していた一方通行の入れ子構造とは逆に、二つの鳥かごが取り払われたことを合図として、ミナとオウムの間にこれまでとは異なる、相互に模倣し合う関係が生起する。

 ミナは、かつての妖精と同じく羽根を持つオウム、ダーウィンの飛行を真似ることで森を抜け出し、ついに元の世界へ戻ることに成功する。自宅へと戻ったミナは、翌日教授の最後の願いを受け、妖精に関する研究資料を破棄するため彼の研究室を訪ね、そこで人類と妖精の関係をより詳しく知ることになる。

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