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映画『レディ・イン・ザ・ウォーター』のラストを逆転させたような結末

©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
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 最後にミナは、スリラー映画としての娯楽性を大きく逸脱して長々と語り出す。「私には自分が怪物だと信じることが、自分の半分が邪悪だと感じることがどういう気持ちかわかる。それはあなたを自分でも認識していない何かに変える」。

 人間、妖精それぞれの規範に当てはまらない異端の存在として、実はミナとマデリンもまた分身のような存在だった。「私はあなたの仲間たちが地上にいると思う。彼女たちを探してみない? 私たちはもう孤独でい続ける必要はないの」。

 鳥かごでの「すみっコぐらし」を経た二人は、ここに至って母と娘に喩えられる非対称な関係から、はみ出しもの、すみっコ同士の対等な関係へと移行する。

 さすがにクライマックスのセリフは長すぎるし、最後の最後で言葉に頼りすぎている感は否めない。どんでん返しという手法自体が父の模倣であると言われても仕方がない。しかし、それでもこの結末は、過保護な父に育てられた鳥かごから出て、女性たちや異種族と連帯して自分たちの力で歩んでいこうとする、一人の若手監督としての気概に溢れている。

 変装したミナがバーで男に語っていた「白鳥の湖」を想起させつつ、イシャナお気に入りだという父のファンタジー映画『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006)の 妖精を水の底の異世界へと帰らせる結末を逆転させたかのように、ミナの説得に心を動かされたマデリンの背中から、失われたはずの黒い羽根が生えてくる。マデリンは「あなたが正しいことを望む」、と告げるとそのまま空へと飛翔し、夜空に消えていく。

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